絶対に許しません!!
公園。
「ニャー、ニャー」
家出中の白猫が誘拐犯の足元に近づく。
座敷童子の童子は誘拐犯が白猫に目を向けた瞬間、口笛を吹いた。
その直後、童子は誘拐犯めがけて走り始めた。
彼女と入れ替わるように白猫はその場から離れる。
童子は右手の人差し指で『束縛』と書いた。
彼女はそれを誘拐犯めがけて放つ。
それは誘拐犯の胸骨あたりに命中。
その直後、白い光を放っている縄状のものが誘拐犯の手足を拘束した。
これで終わりかと思われたが、童子は誘拐犯がその場から逃げられないようにすることにした。彼女が右手の人差し指で『静止』と書くと、誘拐犯の胸骨あたりに命中した。
すると、誘拐犯はその場から動けなくなった。
「これであなたはここから動けなくなりました。もう気は済んだでしょう? おとなしく風の神様を解放しなさい」
「い、いいんですか? 僕に何かあったら、ただでは済みませんよ?」
ん? この声、まさか。
「お兄ちゃん、まだ動かないで」
「いや、でも」
夏樹(雅人の実の妹)は首を横に振る。
「お兄ちゃんは童子ちゃんがいいって言うまで、その場で待機だよ」
「それは分かってるよ。けど……」
夏樹は僕の顔をじっと見つめ始める。
「お兄ちゃんはここにいて。お願い」
「……そ、そんな目で見るなよ。分かったよ、ここにいればいいんだろ?」
よかった、分かってくれた。
「うん!」
*
「あなたは風の神様の力を奪おうとした。それは合っていますか?」
「さ、さぁ? どうでしょうね」
調子に乗るな。
「私は一応、文字使いです。なので、やろうと思えばあなたを私の奴隷にすることもできます。あなたの家が隠してきたことをバラされたくないのであれば、さっさと解放しなさい」
「い、嫌だと言ったら?」
その直後、童子の目に殺意が込められた。
「その時はあなたの記憶を全て強制的に頭から取り出します。風の神様に関するものが見つかり次第、それはあなたに返しますが、それと同時に私の命令に逆らうことができないように記憶を少し改竄します。それが嫌なら、今すぐ彼女を解放しなさい」
「それができるなら、とっくにやってますよ。あの神様は僕の隠れ蓑を奪って暴れています。ですから……」
嘘ですね。
「彼女は他人の言うことは何でも聞いてしまうんですよ。あなたがトリガーなのは確実です。無駄な足掻きをしないでください」
「僕は彼女の手助けをしただけです。外で思いきり遊びたいと言ったのは彼女です。僕は悪くありません」
ダメですね、話になりません。
「分かりました。もういいです」
「え?」
童子が指をパチンと鳴らすと、誘拐犯は意識を失った。
「雅人さん、もう出てきていいですよ」
彼女はその時、ようやく気づいた。
彼の気配がないことに。
「夏樹さん! 羅々さん! 雅人さんはどこに行ったのですか!」
彼女が急いで二人の元に向かうと、二人は意識を失っていた。
「きゃははははははははははは!! 祭りだ! 祭りだー!」
「神様だからといって、何でもやっていいというわけではないんですよ……。あなたは私を怒らせました。もう許しません。絶対に許しません!!」
あたり一帯に響き渡る笑い声は彼女を挑発していた。
これは罠かもしれない。
けれど、そんなことはどうでもいい。
神だろうと何だろうと、彼女を怒らせたことに変わりはないのだから。




