四六時中?
竜巻で休校になった。
幼馴染が、うちにやってきた。
妹が突然起きて、彼女にこう言った。
「お兄ちゃんに近づかないで!」
「な、夏樹ちゃん。それはどういう意味かな?」
とぼけるな。
「私のお兄ちゃんに手出しはさせないよ! 早く帰って!!」
「お、おい、夏樹。いくらなんでも言いすぎだぞ」
お兄ちゃんは何も分かってない。
「お兄ちゃんはこの女の恐ろしさを知らないから、そんなことが言えるんだよ!」
「少し落ち着けよ。いったい羅々が何をしたって言うんだ?」
そんなの決まってる。
「この女は! 自分の目の力を使って、ずーっと監視してたんだよ! 特にお兄ちゃんのことを!」
「そ、そんなことあるわけないだろ? なあ?」
やっぱり……バレてたか。
「さすがだね、夏樹ちゃん。ブラコンの鑑だね」
「え? ちょ、お前、何言ってんだよ。嘘だよな? 嘘だと言ってくれよ」
嘘じゃないよ。
「ごめんね。夏樹ちゃんの言う通りなんだよ。私は雅人と出会ってから、今もずーっと雅人のことを見てたんだよ」
「し、四六時中?」
うん。
「そうだよ。だから、雅人や夏樹ちゃんが知らないこと、いっぱい知ってるよ。例えば……」
「言わなくていい。というか、言うな。怖いから」
そうだよね。怖いよね。
いくら幼馴染でも、やっていいことと悪いことがあるよね。
「怖いっていうのは、お前自身じゃない。お前の欲望が怖いんだ。だから、僕はお前と縁を切ろうとは思わない」
「お兄ちゃん!」
彼は妹の頭の上に手を置く。
「夏樹。お前が僕に対して抱いている感情と羅々が抱いている感情、どっちも同じものだとしたらどうする?」
「そ、そうだとしても! この女がやってることは犯罪で!」
たしかにそうだ。
盗撮してるのと変わらないからな。
けどな。
「それで誰かが傷ついたか? こいつはただ、僕のことを見ていただけだ。それを悪用して、僕や夏樹を引き離すことだってできたはずだ。けど、それをしていないってことは本当に、ずっと僕のことを見ていたかっただけなんだよ」
「お兄ちゃん……」
それに証拠は、こいつの頭の中にしかないからな。




