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竜巻

 朝。


「おはよう」


「おはようございます。寝不足ですか?」


 座敷童子の童子わらこ雅人まさとのちょっとした変化にも気づく。


「まあな。あー、眠い」


「お兄ちゃん、おはよう! あれ? なんかいつもと違うね。寝不足?」


 雅人まさとの実の妹である夏樹なつきも彼の様子がおかしいことに気づいた。


「まあな。今日、学校休みにならないかなー」


「ダーリン。そんなこと言ったら本当にそうなっちゃうよ?」


 家出中の白猫は自分が彼の寝不足の原因だということを自覚していない。


「大丈夫だよ。僕にはそんな力ないから」


 テレビを見ながら、そんなことを言う雅人まさと

 各地の気象状況を伝える時間になったため、各地の天気が明らかになる。


「先ほど、日本各地に竜巻が発生しました。建物の周囲のみに出現しているので被害が拡大する恐れはありませんが、今日は外出しないようにしてください。無闇に近づくと吹き飛ばされます」


「……嘘だろ?」


 突如として発生した竜巻たちのせいで休校になってしまった。

 人が近づくと行く手を阻むかのように勢いが強くなるらしい。

 これでサメとかが空中を泳ぎ始めたら映画の話っぽくなるな。


「仕方ない。今日は一日、家でのんびりするか」


「そうですね。のんびりしましょう」


 朝食を済ませた僕たちはリビングでくつろいでいる。


「なあ、童子わらこ


「何ですか?」


 テレビに夢中なのは構わないが、しれっとこういうことをしないでほしいな。


「僕はお前のソファじゃないぞ?」


「ソファより座り心地がいい場所に座るのはいけないことですか?」


 そ、それは……。


「いや、それは人それぞれだからいいんだけどさ、僕の身になって考えてみろよ」


「何ですか? あなたは幼女に座られただけで興奮する変態なんですか? それとも何かトラウマでもあるのですか?」


 いや、それはないけど。


「お兄ちゃん、こんな日はめったにないんだから細かいことは気にせず、ゆっくりしようよー」


「そうだよ、ダーリン。ゆっくりしようよー」


 白猫は僕の頭の上に乗っている。

 夏樹なつきは僕の右腕にしがみついている。


「ゆっくりできるのはいいが、やることがないと落ち着かないんだよ」


「あんたは、いそがしにでも取り憑かれているのですか? 休める時に休んでおかないと、いつか倒れますよ?」


 うーん、まあ、それはそうなんだけど。


「まあ、たしかに一理あるな。けど、やっぱり……」


 テレビの画面が真っ暗になる。

 部屋も真っ暗になる。

 全てが闇に包まれる。

 つまり、停電だ。


「おや、停電ですね」


『だねー』


 みんな、反応が薄いな。


「ちょっとブレーカー見てくる」


「ダメです。あなたはここにいてください」


 なんでだよ。


「いや、でも、ずっとこのままにしておくのはまずいだろ?」


「大丈夫です。えーっと、たしか……」


 童子わらこは人差し指で『復旧』と書いた。

 それはテレビの中に入ると、あちこちに拡散された。


「あっ、明るくなった」


「まあ、ざっとこんなもんです」


 やっぱりすごいな、童子わらこは。

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