表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/1936

それがいい

 帰宅。


「ただいまー」


「おかえり! お兄ちゃん!!」


 雅人まさとたちが帰ってくると、玄関で待っていた夏樹なつき雅人まさとの実の妹)が彼に抱きついた。


「ただいま。えっと、僕の血の匂いが取れなくなるから少し離れてもらっていいか?」


「血の匂い? もしかして、誰かにひどいことされたの?」


 うーん、まあ、そうなるかな。


「あれくらいじゃ僕は死なないよ。転んで血が出た程度だよ」


「お兄ちゃん、それ嘘だよね? まだ少し痛むんでしょ? おなか」


 夏樹なつきにはかなわないな。


「まあ、そんな感じ……かな」


「そっか。それで? 誰にやられたの? 例のストーカー? それとも、別の誰か?」


 あー、ちょっとこれは危ないな。


「い、いや、でも、そんなに痛くないから大丈夫だよ。ほら、元気! 元気!」


「お兄ちゃんは優しいね。けど、私は許さない。私のお兄ちゃんを傷つけておいて生きていられるわけがない。そうだ、今からそいつの息の根を止めに行こう。うん、そうしよう。それがいい。そうするべきだ。そうしないと私の気が済まない。絶対許さない。許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない……」


 これはまずい!!


夏樹なつき! 僕は本当に気にしてなんかないんだ! だから……!」


「いい加減にしてください!」


 童子わらこ夏樹なつきを押し倒すと、彼女の襟首をつかんだ。


雅人まさとさんがこうして無事に戻ってこられたのは雅人まさとさん自身が理性を失うことなく厄介事を片付けてきたからです! それなのに、あなたは!」


童子わらこちゃん、痛い」


 童子わらこは自分が彼女にしたことを認知すると、ゆっくりと彼女から離れた。

 夏樹なつきはゆっくり立ち上がる。


「お兄ちゃん、お守り今持ってる?」


「お守り? あー、羅々(らら)がくれた目玉のことか。それがどうかしたのか?」


 彼女は彼に向けて手を出した。


「それ、貸して」


「え? あー、分かった」


 彼女にそれを渡すと、彼女は数秒見つめたのち、こう言った。


「あのね、お兄ちゃんと童子わらこちゃんが地下で何と戦ってたのか、私知ってるんだ」


「え? そ、それって、まさか……」


 そのまさかだよ。


「あの女はね、私にそれを見せるためにお兄ちゃんにそれを渡したんだよ」


「そ、そうだったのか。けど、どうしてあいつはそんなことを……」


 そんなの簡単だよ。


「そんなの決まってるよ。私にお兄ちゃんが酷い目にっているところを見せて、私の気持ちが変わるように仕向けたんだよ」


「あ、あいつはそんなことするようなやつじゃないよ」


 そうだ、あいつはそんなことするようなやつじゃない。


「でも、それ以外に考えられる?」


「き、きっと間違えたんだよ。自分が見ようとしてたら、動作不良か何かで誤って……」


 だといいんだけどね。


「そうだね。今はそういうことにしておくよ。じゃあ、おやすみ」


「あ、ああ、おやすみ」


 なんだろう、なんだかものすごく嫌な予感がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ