お守り代わり
登校中。
「ねえ、雅人。休日、何してた?」
「え? あー、そうだな。普通に家事やってたかな」
え? もしかして、どこにも行ってないの?
「へ、へえ、それはある意味すごいね」
「いや、別に何もなかったわけじゃ……あー、今のは聞かなかったことにしてくれ」
それは無理な相談だね。
「百々目鬼の私に隠し事ができると思う?」
「無理、だろうな。まったく、お前の力って本当に便利だよな」
雅人、鬼の力もなかなかいいと思うよ。
物理的に倒すのは、ほぼ不可能なんだから。
「まあねー。ほら、さっさと話してよ」
「はいはい」
彼は休日での出来事と今日の放課後に行かなければならない場所について話した。
「なるほどね。ねえ、それ私たちに……」
「ダメだ」
まだ最後まで言ってないんだけど。
「なんで? 雅人はみんなのこと信用してないの?」
「別に部員だからっていう理由でついてくるなって言いたいわけじゃないんだよ。ただ、僕と同じ宿命を背負ったやつが暴走しないっていう保証なんてないから」
「それって、みんなが辛い思いをしないようにするためでしょ?」
今日は妙に察しがいいな。
「あ、ああ、まあ、そうだな」
「分かった。じゃあ、私たちはその件に一切関与しない。これでいい?」
なんか今日の羅々、すごく賢そうな感じがするな。
「あ、ああ、そうしてもらえると助かるよ」
「分かった。じゃあ、手を出して」
は?
「お、おう」
「よいしょ……っと。はい、どうぞ。お守り代わりだよ」
彼女は自分の腕にある無数の目玉のうち、一つだけ僕に手渡した。
「痛くないのか?」
「また生えてくるから別に痛くないよ。爪みたいなものだから。でも、ちゃんと目としての機能はあるから何かの役に立つと思うよ」
な、なるほど。
「あ、ありがとう。一応、受け取っておくよ」
「ちゃんと返してね? それ、私の体の一部なんだから」
お、おう。
「ああ、分かった。約束するよ」
「あっ、ちなみに今の音声は録音したからね? だから、ちゃんと守ってね?」
えー。
「りょ、了解」
「よろしい。じゃあ、今日も一日頑張っていこう!」
いつも元気なお前がいるから、僕は……。
まあ、これは心の内に留めておこう。
死亡フラグを立てたくない。