和む
朝ごはんを食べている。
「なあ、童子」
「はい、何ですか?」
雅人が座敷童子の童子に声をかけると、彼女はすぐに応答した。
「お前の髪って、伸びないのか?」
「……え?」
彼はずっと気になっていた。
出会ってから今日まで童子の髪が全く伸びていないことに。
「いや、だってさ。なんか、僕が知ってる座敷童子って、みんなアレだからさ」
「座敷童子というのは、そういうものなんですよ。しかし、座敷童子をやめれば、ちゃんと伸びますよ」
やめる? どうやって?
「へえ、そうなのか。じゃあ、どうすれば座敷童子をやめられるんだ?」
「私たち座敷童子は死んだ直後の生命体の魂を食べるか、それを自分の体に宿らせることで座敷童子とは違う存在になれます。そうすることで座敷童子とは異なる種族になれます」
た、魂を食べるか、自分の体に宿すと座敷童子をやめられるのか。
あー、まずいな。食事中にする話じゃなかったな。
ちょっと食欲が……。
「あー、なるほど。分かった。もういいよ。なんかごめんな」
「? 何を謝っているのですか? 私のことを知りたいと思ったから、あなたは私にそう訊ねた。私はそれに答えた。ただ、それだけですよね?」
それはまあ……そうなんだけど。
「髪が伸びなくても普通に生活できます。けれど、身長が伸びないのは許せません」
そうかな? そのままの方が可愛いと思うけど。
「お前の場合、子ども扱いされるのが嫌なんだろ?」
「嫌です。精神はちゃんと成人しているのに子ども扱いされるのは仲間外れにされているような気がしてなりませんから」
見た目は子ども、頭脳は大人……か。
「でも、お前はお前だ。何かの拍子に身長が伸びても外見以外、何も変わらない。そうだろ?」
「そう、でしょうか?」
もし、そうなったら少しだけ素直になってほしいな。
「何ですか? 私の顔に何かついていますか?」
「いや、別に。ただ、今日も童子はきれいだなーって思っただけだよ」
童子の頬が赤くなる。
彼女は彼から目を逸らす。
「そ、そうですか」
「ああ」
いいなー、私もお兄ちゃんとそういう会話したいなー。
あー、なんか和むなー。
夏樹(雅人の実の妹)はそんなことを考えながら、牛乳を飲んでいた。