豆腐に鎹
たまにテレビで人間と妖怪の居住地を分けるか否かについて話しているが妖怪側が意見すると人間側は必ず自分たちの正しさを相手に押し付けてくる。正直なんでこんな番組で視聴率を取れるのか不思議でならないが、まあどの時代でもいいニュースより悪いニュースの方が有名になるからなーと僕は思っている。
「それにしても人間側は妖怪側が何を言っても『お前たちは必要ない。今すぐこの星から出ていけ』みたいなことしか言わないなー。こういうのを豆腐に鎹もしくは糠に釘っていうのかなー?」
「のれんに腕押しとも言うよ」
「そうか。そうだな。なあ、夏樹。人間たちはいつか自分たちが滅びの道を歩んでいることに気づくと思うか?」
「気づいたとしてももう後戻りできない地点にいるから無駄だと思うよ」
「そうかー。救いはないのかなー?」
「人間を助けて妖怪側に何かメリットあるの?」
「あー、そういえば、お前は僕以外どうでもいい派だったな」
「うん」
「じゃあ、念のためいくつか選択肢を用意しておくかな」
「お義兄ちゃんは優しいね」
「少しは希望があった方が生きたいと思えるだろ?」
「まあね。でも、降りかかる火の粉は全部排除するよ」
「ああ、その時はよろしく頼む。がん細胞は自分をがん細胞だと認識できないからな」




