欲 妖怪ないものねだり、登場
ああ……あれも欲しい。これも欲しい。もっと、もっと、もっと欲しい……!!
「よこせー! もっとよこせー!」
妖怪ないものねだりは欲張りだ。しかし、他人から奪った物は全て背中にある小さな穴から出ていってしまう。故に彼は一生満たされない。
「ああ、今日も何も得られなかった。どうしてボクはいつもこうなんだろう」
「やあ、ないものねだり。どうしたんだい?」
「雅人ー、今日も腹ペコだよー。助けてー」
「そうか。じゃあ、うちで作ってるハチミツをあげよう」
「ハチミツかー。砂糖とか混じってない?」
「うちはそんなことしないよ」
「そっか。じゃあ、いただきます」
彼は小さじ一杯に注がれた黄金の液体を少しずつ飲んでいる。
「どうだ?」
「おいちい」
「そうかそうか。それはよかった」
「毎日ハチミツでもいいくらいだよ」
「毎日食べればいいじゃないか」
「え?」
「朝起きた時、三時のおやつ、晩ごはんのデザート。ハチミツはいつ食べても僕たちを幸せにしてくれるから毎日食べても問題ないよ」
「そうなの?」
「うん、そうだよ。ただし、赤ちゃんにあげちゃダメだよ」
「どうして?」
「うまく分解できないからだよ」
「そっかー。ありがとう、なんか気が楽になったよ」
「それはよかった」
「じゃあ、ボクそろそろ行くね」
「ああ、またな、ないものねだり」
「うん!」




