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サッカーとジュースとハットトリック

 今日の体育はサッカーだ。


「向こうはサッカー部が多いな」


「終わりだ……」


「もうダメだ……おしまいだ……」


「死兆星が見える気がする……」


 運動があまり得意ではない男子たちは皆ネガティブになっている。


「どうした? まだ試合は始まってないぞ?」


「だってよー」


「向こうには『八倒はっとう りく』がいるんだぞ」


「公式非公式問わずあいつがハットトリック決めずに終わった試合はないんだぜ? そんなやつがいるチームに勝てると思うか?」


「僕は勝てると思ってるよ」


「そうか。じゃあ、今日の試合で雅人まさとがハットトリック決められたらジュース奢ってやるよ」


「本当か?」


「ああ」


「うん」


「おう」


「そうか。じゃあ、全部ロングシュートでもいいか?」


「なんでもいいぞ」


「うん、そこはどうでもいい」


「うんうん」


「そうか。じゃあ、やりますか」


 試合開始と同時に僕は相手のパスコースを全て封じた。


「な、なんじゃ! こりゃあ!!」


「ま、雅人まさとがたくさんいる……」


「いや、違う! これ、全部残像だ!!」


「嘘だろ! こんなのありかよ!!」


 敵チームは皆慌てている。


「よし、今だ!!」


「あっ! しまった!!」


「キーパー! 行ったぞー! 絶対止めろよー!」


「任せろ!!」


 ゴールキーパーの神に愛されし者『枠内わくない 守護まもる』に止められないボールは一つもない!


「来い! 雅人まさと!!」


「行くぞー、ロングシュートー」


 ふん! バカめ! この俺が俺の真正面に飛んでくるボールを取れないとでも思っているのか!!


「来い! 受け止めてやる!!」


「と見せかけて『フォーク』」


「な、なにいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


「よし、まずは一点だな」


「な、なんだ! 今のシュートはー!!」


「何って野球のフォークボールを参考にしたシュートだよ。ダメだったか?」


「ダメではない……ダメではないが……。全員集まれ! りく以外雅人(まさと)をマークしろ!!」


『分かった!』


雅人まさとー! 大丈夫かー!」


「大丈夫だー! それより全員でゴールを守れー!!」


『分かったー!』


「雑魚が何人いようと無駄だ! 僕の華麗なシュートを止めることはできない!! くらえ! 『フローラルシュート』!!」


「うわ! なんだ! この花びら!」


「あのロングシュートは風を操れるみたいだ」


「うわ! 花粉も飛んできた!!」


「落ち着け! みんなでゴールを守るんだー!」


『おう!!』


 しかし、りくが放ったシュートの軌道は誰にも予測できなかった。


「ゴール! これで一対一だな!!」


雅人まさと、すまねえ」


「あいつのシュート人間技じゃねえよ」


「大丈夫。まだ時間はある。切り替えていこう」


『おう!』


 僕はリフティングをしながら前進。


雅人まさとー! ボールをよこせー!!」


 どうやらりくはファウル覚悟で背後から僕にタックルするようだ。


「よっと」


「な、なにいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


 僕が真上に蹴り上げたボールは雲の上まで飛んでいった。


「取っていいよ」


「は?」


「ボールもうすぐ落ちてくるから。おっ、来た来た」


「わ、わ、わ、うわああああああああああああ!!」


 りくが落ちてくるボールから逃げる。ボールが地面に落ちた直後、僕は敵ゴールめがけてボールを蹴った。


「またロングシュートか! だが次は止めてみせる!」


「避けた方がいいと思うよ」


「誰が避けるかー!」


 ん? なんだ? ボールが巨大なペンギンに見える。気のせいか?


「ボールだろうとペンギンだろうと止めてみせる!!」


 俺がボールに触った瞬間、俺はゴールのネットまで吹っ飛んでいた。


「な、なんだ? 今のシュートは……」


「『突撃ビッグペンギン』だよ」


 これであと一点かー。


「そ、そうか。りく! 本気を出せ! こいつは強すぎる!!」


「わ、分かった!!」


 あの技はあまり使いたくないけど使わないと勝てなさそうだから使うしかない!


「『モスキートシュート』!!」


だー! の大群だー!」


「逃げろー!」


 なるほど。ボールをの大群だと思い込ませるのか。だったら……。


「『蚊帳かやブロック』」


「ぼ、僕のシュートを腹で受け止めただと!?」


「まあね。じゃあ、ラスト行くよー」


「ま、待て! ハットトリックだけは勘弁してくれ!!」


「それは無理かなー。ハットトリック決めないとジュースもらえないから」


「そんなものを手に入れて何になる?」


「僕の喉がうるおう」


「なるほど。だが残された時間はあまりないぞ?」


「大丈夫。なんとかなるよ」


「さて、それはどうかな。守護まもる!!」


「おう!」


「ありゃ、ゴールと合体しちゃった」


「生きたゴールに決められるかな?」


「決めてみせるさ。『ファイナルトルネードシュート』!!」


「ふっふっふ……あまいね。ゴールと一体化した彼はてこでも動かないよ」


「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 手足が生えているゴールは風圧で今にも倒れそうだ。


守護まもるー!!」


「えーっと、これで三点目かな。はい、ゴール」


「やったー! ハットトリックだー!!」


「ちょうどチャイム鳴ったぞー! 試合終了だー!」


「負けたよ。やるね、雅人まさと


「そっちこそ」


「でも、次は負けないよ」


「次も僕が……いや、僕たちが勝つさ」


「ははは、いい勉強になったよ。それじゃあ、一緒に片付けようか」


「ああ」

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