夢幻泡影拳と無限抱擁拳
うーん、なーんか変なのが来るなー。
「夏樹」
「なあに?」
「あと十分後に僕は『一度』この世から消える」
「一度ってことは復活できるんだよね?」
「ああ」
「そっか。じゃあ、私がなんとかするね」
「ああ、頼む」
「うん、分かった」
僕はうちのリビングのソファに座っている夏樹(僕たちの妹)の頭を撫でるとうちの近くにある公園に向かった。
*
ここはうちの近くにある公園……。
「星の王! 今日がお前の命日だ!!」
「はいはい」
「くらえ! 『夢幻泡影拳』!!」
いつものように捕獲結界で捕獲しようかなー。でも、この技は相手の技を無効化した後、相手の技や相手をこの世から消し去っちゃうんだよなー。まあ、夏樹がなんとかしてくれるから防御と回避はしなくていいや。
「うわー、やーらーれーたー」
「やった! やったぞー! 星の王に勝ったぞー!」
「はいはい、よかったねー。『夢幻泡影拳』の使い手さん」
「出たな! 星の王の妹! だが、もう遅い! 星の王はさっき俺が倒した!!」
「ふーん、で?」
「つまり! 今日から俺が星の王だ!!」
「へえ、そうなんだ。でも、もうすぐお義兄ちゃん復活するからあんたが自称星の王でいられる時間はそんなにないよ」
「な、なんだと!?」
お義兄ちゃん、戻ってきて。
「『無限抱擁拳』」
「な、なぜだ! なぜ俺がさっき消し去ったはずの星の王を構成するあらゆるものが一つになろうとしているんだ!?」
「『無限抱擁拳』は宇宙とつながることで不可能を可能にする。技名はあんたのと被ってるけど、私のはあんたのそれとは比べ物にならないくらいできること多いわよ」
「く、くそー! こうなったら星の王が復活する前にお前をこの世から消し去ってやる!!」
「きゃー、たーすーけーてー」
「『全方位夢幻泡影拳』……寸止め」
「星の王! なぜだ! なぜ俺を殺さない! さぁ! 早く俺を殺せ!!」
「お前のおかげで僕たちは面白い技を覚えられた。だから今回は殺さない」
「いつか絶対後悔するぞ……」
「それはないかなー。あっ、一応感謝はしてるよ。なあ? 夏樹」
「うん」
「うるさい! とっとと失せろ!!」
「はいはい。夏樹、帰るぞ」
「はーい」
あー、楽しかった。また会えるといいなー。




