タマガミちゃん、キレる
ある日、海より広い心を持つ玉珠球弾ちゃんの堪忍袋の緒が切れた。彼女は人間界にある丸いものを操り世界中の軍隊を数分で壊滅させた。
「次はスペースデブリを増やしまくってる組織をぶっ潰してやる!!」
「まあまあ、そう言わずに。とりあえずカ○ピスでも飲みなよ」
「星の王! お前は私の敵か? それとも味方か?」
「その答えは君がどうして怒っているのか教えてくれたら言うよ」
「そうか。よし、じゃあ、まずカ○ピスを飲もう!」
「召し上がれ」
彼女はガラスのコップに入っているカ○ピスを一気に飲み干す。
「カッー! うまい! うまいけど……やっぱり人間は滅ぼすべきだ!!」
「どうしてそう思うの?」
「人間たちは体育館の天井から降りられなくなった球体を長年放置している! 他にも資源や土地を巡って無駄な弾を作り消費し命の奪い合いをしたり、商品価値や利用価値がないという理由で真珠や宝石を廃棄したりしている! 故に! 私は今週中に人類を滅ぼすことにした!!」
「そうか。でも、君がさっき飲んだカ○ピスを作ったのは人間だよ?」
「だ、黙れ! それよりお前はどう考えてもこの星の評価が下がる悪行ばかり繰り返す人間たちをいつまで野放しにしておくつもりなんだ?」
「タマガミちゃん。僕はね、少しだけ人間に期待しているんだよ」
「何?」
「たしかに君の言う通り人間は悪行を繰り返す。でもね、人間は他の動物には作れない物をたくさん作れるんだよ」
「だとしても……私は人間たちを絶対に許さない!! 物を大切にしないやつらは全員死刑だ!!」
「そんなことしたら君が楽しみにしてる漫画の続き一生読めなくなるよ?」
「うっ! そ、それは……!」
「農家や料理人もいなくなるからもうおいしいもの食べられなくなるなー。そういえば来週、新作スイーツの発表があるなー。でも、それまでに人類滅んでるからなー。きっと一生食べられないなー」
「くっ! そ、それは……!」
「動物園や植物園、水族館なんかにいる動植物たちのお世話は誰がするんだろう。かわいそうに。きっとみんな衰弱死するだろうね」
「うー! 分かった! 今回はこれくらいで勘弁してやる! けど、今より悪化したら今度こそ容赦なく人類滅ぼすからな!!」
「ありがとう、タマガミちゃん。じゃあ、今回の出来事はなかったことにするね」
「ああ」
「よし、じゃあ、時を戻そう。えいっ!!」
今回はどうにかなったが次もうまくいく保証はない。
「なあ」
「ん? なんだい?」
「連絡先教えてくれないか?」
「別にいいけど、僕結構忙しいから多分会える機会ほとんどないよ?」
「構わない」
「そっか。分かった」
「ありがとう、星の王。これでごはん十杯はいけそうだ」
「何の話だ?」
「気にするな、こっちの話だ。じゃあ、またな」
「ああ、またな」




