体から小人が生える パワフルちゃん登場
休日の昼過ぎ。僕は実家の前を行ったり来たりしているやつれた男性に声をかけた。
「この家に何かよくないものでもいるんですか?」
「いえ、私は相談をしに来たんです」
「相談?」
「はい」
「妖怪絡みですか?」
「まあ、そんな感じです」
「そうですか。じゃあ、とりあえず中で話しましょうか」
「は、はい」
「……すごく広い家ですね。天井が見えない」
「いろんな娘がいますからね。うちに住んでる座敷童子がちょくちょく住みやすくしてくれるんですよ」
「そうなんですかー。あっ、申し遅れました。私はこういうものです」
おっ、名刺交換か。名刺には『時間管理局新人局員』と『常盤 金也』という名前、それと彼の連絡先が書かれている。
「これはご丁寧に。あっ、僕は星の王をやっている『山本 雅人』です」
「存じております」
「そうでしたか。あっ、何か飲みます?」
「いえ、結構です」
「そうですか。じゃあ、本題に入りましょうか」
「はい」
彼の悩みはたまに体から小人が生えるというものだった。
「最近、ケガしたりしませんでしたか?」
「いえ」
「小人は今どこにいますか?」
「うちにいます。家事を手伝ってくれるのはありがたいのですが数が多いので困っています」
「そうですか。最近、神社に行きましたか?」
「いえ。あっ、そういえば最近、流星群を観に行きました」
「ほう。それでそれで」
「あの時、私はうちに子どもがたくさんいたら楽しいだろうなーと心の中でつぶやきました」
「それですね」
「え?」
「流星群自体に願いを叶える力がなくても人の願いというのは何かに届きます。その何かがあなたの望みを叶えてくれたんだと思います」
「そうなんですか?」
「一応、その何かが何なのか調べられますけど、どうします?」
「いえ、結構です。種なしの私の願いを叶えてくれたんですからそれはきっと悪いものではありません」
「そうですか。じゃあ、座敷童子を一人派遣しますね」
「それはとてもありがたいのですが、そんなことできるんですか?」
「できますよ。なあ? 童子」
「はい、可能です」
「うわっ! なんか出てきた!!」
「彼女はうちが雇っている座敷童子です」
「はじめまして。『座敷 童子』です。あなたの家に永住してくれそうな座敷童子が三人ほどいるのですがどの娘にしますか?」
「な、なんかお見合いみたいですね」
「お見合いです。あなたが死ぬまであなたの家にいますから」
「は、はぁ……。じゃあ、この娘で」
「その娘は少しメンヘラです」
「え? じゃあ、この娘は?」
「その娘は少しヤンデレです」
「じゃ、じゃあ、この娘は?」
「その娘は自他共に認める怪力です」
「じゃあ、この娘にします」
「その娘は力の制御が下手なのでよく家を壊します。それでも構いませんか?」
「小人たちが直してくれるので大丈夫です」
「そうですか。では、この書類にサインしてください」
「はい」
「これで契約成立です。パワフル、自己紹介しなさい」
「はいー! あ、あの! はじめまして。『座敷 童超怪力』です! え、えっと、その、どうか末永くよろしくお願いします!!」
「こちらこそよろしくお願いします。あー、私は『常盤 金也』です」
「か、変わった名前ですね」
「よく言われます」
「わ、私もです!」
「でしょうね」
「お似合いだなー」
「私もそう思います」
「そ、そうですかー?」
「はい、とっても」
「私もそう思います」
「じゃ、じゃあ、私たちはこれで失礼します。星の王様、今日は本当にありがとうございました」
「どういたしまして。何かあったらすぐ連絡してください」
「分かりました。では、失礼します」
「し、失礼します!!」
「……メンヘラとヤンデレは今回もダメだったか」
「ええ」
「もう二人セットでいいんじゃないか? 双子なんだから」
「そうします」
「一応、何人か候補いるんだろ?」
「ええ、まあ」
「全員やばいのか?」
「はい」
「うーん……地球以外はどうだ?」
「え?」
「宇宙は広い。きっと二人を受け入れてくれるやつがいるさ」
「だといいのですが……」
「あっ、分身星人なんかどうだ?」
「考えておきます」
「ああ」




