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虹の花 アイリスちゃんがやってきた

 実家の庭で育てているジャーマンアイリスがそろそろ咲きそうだ。


「……うーん」


「お義兄にいちゃん、どうしたの?」


夏樹なつきか。別に大したことじゃないんだが少しだけ気になることがあるんだよ」


「へえ、それってもしかしてこの花のこと?」


「ああ、そうだ」


「ジャーマンアイリスのつぼみから虹色の光が出てる。なんでだろう」


「ご主人様、それはおそらく何かの前兆です」


 少し前にうちのメイドになったヘラ様がそう言う。


「なるほど。おっ、そろそろ咲きそうだな」


 ジャーマンアイリスの花が咲くとその中から虹色の衣を身にまとった幼女が現れた。


「ヘラしゃまー!」


「あら、アイリスじゃない。久しぶり」


「アイリス……。虹の女神アイリスか」


「はい、そうです! あっ、あなたが星の王ですね」


「ああ、そうだが」


「今日はあなたにお手紙を渡しに来ました」


 そういえばアイリスはヘラ様の伝令使だったな。


「手紙? 誰から?」


「私からです」


「え?」


「天界からあなたのことをずっと見ていました。これは私の気持ちです!」


「……えっと」


「へえ……」


「あらあら」


「ここで読んでもいいかな?」


「はい!!」


 星の王様へ

 あなたはいつも誰かのために自分にできる精一杯のことをしています。それは本当にすばらしいことだと思います。ですが、あなたはもっと自分を大切にすべきです。一人で抱え込まず誰かを頼ってください。例えば、私とか。その、つまり虹の女神アイリスはあなたを愛しているということです。私はこれからあなたを支えながら共に歩んでいきたいです。手を握ったりキスをしたりデートしたり結婚したり子作りしたり子育てしたり家族旅行したり他にもやりたいことがたくさんありますがそれを書くと私が運べなくなるのでやめておきます。

              虹の女神アイリスより


「あなたの気持ち、ちゃんと伝わりました」


「じゃあ!!」


「ですが、あなたは既婚者で僕はまだ高校生だ」


「あの神は私を愛していません。複数の妻を持っている自分を愛しているのです」


「僕はその神の代わりにはなれませんよ」


「私はあなたが好きなんです! 誰かの代わりになって欲しいだなんて思っていません!!」


「じゃあ、私と戦ってそれを証明してみて」


夏樹なつき……」


「分かりました。では、参ります!!」


「来い!!」


 数分後、アイリスちゃんは完敗した。


「はぁ……やっぱり無効化は強いですねー。私が何をしても効かないんですから」


「はいはい。で? どうする? まだやる?」


「いえ、結構です」


「じゃあ、諦めるんだね」


「いいえ、諦めません」


「は?」


「私は決して諦めません。いつか必ずあなたを倒してみせます!!」


「はいはい」


「アイリスちゃん」


「お呼びですか? ヘラしゃま」


「彼と結ばれたい?」


「はい! もちろんです!」


「そう。じゃあ、とりあえずこの家のメイドになりなさい」


「かしこまりました!」


「ちょっと話を勝手に進めないでよ」


夏樹なつきちゃん、このは私の忠実な部下だからこの娘に何かしたらこの世界滅ぼしちゃうわよ」


「どうぞご自由に」


夏樹なつき、落ち着け。ヘラ様を敵に回すと大変なことになるぞ」


「でも!」


夏樹なつき


「分かった……でも、お前やアイリスがお義兄にいちゃんに手を出そうとしたらその時は全力で止めるからね」


「ええ、分かったわ。アイリス、こっちに来なさい。まずはメイド服に着替えましょう」


「はい!!」


「……夏樹なつき


「何?」


「その、ありがとな。おかげで大ごとにならずに済んだよ」


「お義兄にいちゃんは誰に対しても優しいよね」


「ロキとかには厳しいぞ」


「たしかに」


 僕たちはくすくす笑った。その直後、ピリピリしていた空気が少し和んだ。


「ねえ、お義兄にいちゃん」


「なんだ?」


「これからもこういうことあるのかな?」


「ないとは言い切れないな」


「だよねー。でも、私負けないよ。私以上にお義兄にいちゃんのこと好きな娘絶対いないから」


「そうか。じゃあ、そろそろお昼にするか」


「うん!!」

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