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て、丁寧に!?

 雅人まさと夏樹なつき雅人まさとの実の妹)の黒い長髪を洗っている間、ずっと考え事をしていた。


「ねえ、お兄ちゃん」


「……」


 反応がない。うーんと、こういう時は。


「お兄ちゃん! ちゃんと洗ってくれないと嫌いになるよ!」


「それは嫌だあああああああああああああああ!!」


 彼が大声で叫ぶと同時に夏樹なつき雅人まさとの方に目を向けた。


「冗談だよ。というか、私がお兄ちゃんのこと嫌いになるわけないじゃん」


「そ、そうなのか? てっきり、本気だと思ったぞ」


 お兄ちゃんは単純だなー。

 でも、私は好きだよ。そういうところ。

 彼女はニコニコ笑っている。

 雅人まさとは目をパチクリさせながら、こう言う。


「な、なあ、夏樹なつき


「なあに?」


 夏樹なつきに相談してもいいのか?

 厄介ごとに巻き込んでしまうかもしれないのに。


「お兄ちゃんがずっと考え事してたのは知ってるよ。だから、その……私で良ければ力になるよ」


「……夏樹なつき


 そう、だよな。夏樹なつきに相談しちゃいけないっていうきまりはないもんな。


「えーっと、その……明日、雅紀まさきを助けに行くんだけど夏樹なつきはどう思う?」


「お兄ちゃんの気持ちを先に聞かせてほしいな」


 まあ、だいたい想像できるけどね。


「えっと、僕は助けられるのなら助けたいって思ってるよ。僕と同じような鬼憑きが苦しむ姿を見るのは辛いから」


「なら、それでいいんじゃない? 私はお兄ちゃんのやりたいようにすればいいって思ってるよ。だから、お兄ちゃんにできることを精一杯やればいいよ」


 ああ、なんて優しい子なんだ。

 僕の妹は天使か? 天使なのか?


「分かりました。ナツキエル様」


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん! その呼び方やめてよ! 私は天使じゃなくて二口女なんだよ?」


 だから、なんだ!


「それがどうした! ナツキエル様、万歳! ナツキエル様、万歳!」


 お兄ちゃんのテンションがおかしい。


「お兄ちゃん! ちょっと落ち着いて!!」


「ゴハッ!!」


 彼は彼女の黒い長髪で腹を殴られた。


「あっ! ごめんね! お兄ちゃん! 痛かった?」


「あ、あれくらい平気だよ。あはははははは」


 おかしいな? あれくらいの攻撃じゃ、びくともしないはずなのに。


「そう。なら、いいけど」


「えっと、じゃあ、お礼にいつもより丁寧に洗ってもいいか?」


 て、丁寧に!?


「う、うん、いいよ。でも、優しくしてね?」


「わ、分かった」


 な、なんだ? 今、妙に色っぽかったような。


「お兄ちゃん、しないの?」


「え? あー、ごめんよ。では、さっそく」


 そのやりとりを外で聞いていた童子わらこは二人の仲が相変わらず良いことに気づき、思わずニッコリ笑ってしまった。

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