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雅紀
山本家。
「それで? 僕に何の用だ?」
そいつは顔を見せようとしない。
帽子もそうだが、影か何かで顔を隠しているようだ。
トレンチコートを着ているその人物はゆっくりと口を開く。
「俺の息子は鬼に取り憑かれているんだ」
「なるほどな。つまり、あんたの息子と同じような存在である僕にあんたの息子に力の制御の仕方を教えろということだな」
違ったかな?
「そ、その通りだ。よく分かったな」
「僕を知っている存在がやりそうなことは人体実験か権力を拡大させるか……僕と同じようなやつを救うために相談しに来る……だからな」
だからって、どうしてあんな嫌がらせを。
「そうか。あー、その……店でのことは謝る。あれは少し試したんだ。鬼の力を宿している者が力に頼らず、どう解決するのかを」
「あれは解決というか、回避に近いかな。で? あんたの息子は今、どんな状況なんだ?」
そいつは深いため息を吐いた。
「息子は……雅紀は……ほぼ鬼化しているんだ」
「鬼化……ね」
あまり深く関わりたくないが、ここで断るのも申し訳ない。
さて、どうしたものかな?




