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親玉

 書き直した部の紹介文を部員になる予定のメンバー全員に見せると、目を輝かせながら何度もうなずいた。

 そんなにいいものなのかは僕自身よく分からない。

 けど、これならきっと……。

 僕がそんなことを考えていると、ただならぬ妖気が僕に向けられていることに気づいた。


「みんな、ごめん。ちょっと行ってくる」


 僕はみんなが呼び止めているのに気づいていないフリをした。

 ごめん、みんな。けど、これは僕の責任だ。

 それにみんなを危険な目にわせるわけにはいかないんだ。

 僕は校庭に向けて、全力で走った。

 それが周りに危害を加える前に、なんとかしたかったからだ。


「お前たちの言っていたその小僧は、今ここにいるのだな?」


『はい! 間違いありません!!』


「そうか。おっ、噂をすれば、なんとやらだな」


鉄鼠てっそ! なぜここに来た! 僕に用があるなら、せめて学校が終わってからにしろよ!!」


 僕が黒い着物を身にまとった大きなねずみにそう言うと、それはニシリと笑った。


「なるほど。鬼の力を宿しているというのはうそではないようだな」


「お前、まさか妹を誘拐しようとしてたやつらの親玉か?」


「いかにも。われこそが、この辺り一帯のねずみたちの総大将である!」


 わざわざ学校まで来るなんて。

 いったい、何の用だ?


「そうか。それで? その総大将様が僕に何の用だ?」


「それはもちろん、お前の力をわれのものにするためだ」


 こいつ、正気か?

 僕はまだ高校生だぞ?


「そんなことのために僕をスカウトしに来たのか。けど、残念ながら無理な相談だ。僕はこの力を悪行に使うつもりはない」


「小僧、我らはただ才ある者たちを集めているだけなのだぞ? それが悪行だと言えるのか?」


 僕の妹を誘拐しようとしたのに、よくそんなことが言えるな。


「僕の妹を誘拐しようとしたやつらの親玉の言うことなんて信じられるか! とっととこの場から立ち去れ!」


「いいのか? あまり我の機嫌を損ねると、取り返しのつかないことになるぞ?」


 こいつ、何を言って……まさか!


「僕の妹に手を出すつもりなら、やめておけ。僕は妹のことになると、手加減できなくなる」


「我はそれが望みなのだよ。本気のお前と戦ってみたい」


 こいつ、どれだけ僕の妹に固執するんだ?

 妹が何をした?

 僕が何をした?

 なぜ、こんなことになった?

 何もかも訳が分からない。


「分かった。戦えばいいんだろ? けど、ここは学校だ。ケンカをする場所じゃない」


「ふむ、それもそうだな。では、共に参ろうか」


 彼らが校門から出て行くのを見ていた部員になる予定のものたちは、すぐに彼らの後を追い始めた。

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