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勧善懲悪くん、教育現場にも配備される

 今日から教育現場にも配備される『勧善懲悪くん』。児童もしくは生徒、保護者、先生とにかくいろんな人と接しないといけないけど大丈夫かなー?


「今日からこの学校に配備された『勧善懲悪くん』です。みなさん、どうぞよろしく」


 教室の空気は荒れていた。生徒たちは教室でカードゲームや化粧をしており窓ガラスはところどころ割れている。前の担任は夜逃げし、他の先生は課題やプリントだけ置いてさっさと出ていく。


「校長先生」


「はい、なんでしょう」


「どうしてあのクラスだけ荒れてるんですか?」


「資料に書いてある通りです」


「前の担任が気弱だったせいであそこまで荒れるものなんですか?」


「気弱と言いますかあそこにいる生徒たちは全員権力者の子でしてね、注意しようにも注意できないんですよ」


「まあ、そんなことだろうと思いましたよ。でも、安心してください。ボクが……いや、ボクたちがなんとかしますから」


「は、はぁ……」


「もしもし、こちら〇〇高校に配備されている『勧善懲悪くん』です。星の王、あなたに頼みたいことがあります」


 次の日、権力者たちの黒い噂が世界中に広まった。


「おい! ポンコツ! お前だろ! 俺たちの親のちょっかい出したのは!!」


「だとしたらどうします?」


「お前をスクラップにしてやる!!」


「あまり知られていませんが人間はボクを破壊できません。試してみますか?」


「おー! やってやるよ! みんなかかれー!」


『わー!』


 生徒たちは机、椅子、コンパス、ボールペン、金属バット、カッター、ハサミなどでボクを攻撃したがボクは無傷でした。


「な、なんで壊れないんだ?」


「そういう設定だからです」


「黙れー!」


 男子生徒がバケツに入った水をボクにかける。


「ありがとうございます。ボク、水大好きなんですよ。冷却用にしますね」


「く、くそー!」


「あなた方は今まで大人に守られてきました。しかし、人はいつか死にます。自分のことはある程度自分でできるようにしておいた方がいいですよ」


「知るかー! とっととこの教室から出ていけー!」


「分かりました。では、今日からこの『ヒダル神』があなたたちの担任になります」


「みなさん、どうぞよろしく」


「うっ……! な、なんだ? 急に腹が減って……」


「おや? みなさんどうしたんですか? もしやヒダル神の能力を知らないんですか?」


「そ、そんなの知ってるわけねえだろ……」


「政府は妖怪に関する情報を常に発信しています。そのことを知っていればこの場にいる何人かは空腹になることはなかったでしょう」


「う、うるせえ……早くなんとかしろ……」


「分かりました。では、手の平に指で『米』という漢字を書いた後、その字を米だと思って手の平を舐めてください」


「わ、分からねえ……」


「え?」


「こめって漢字どうやって書くのか分からねえ……」


「そうですか。では、黒板に書いておきますね」


「おー、そう書くのか……ありがとよ……」


 生徒たちはボクの指示通りに動き、なんとか難を逃れた。


「ヒダル神さん、お疲れ様でした。もう帰っていいですよ」


「はーい」


「今回はボクの自作自演でしたが予想外の事態に遭遇した時、自分を守れるのは自分だけなのでこれから少しずついろんなことを学んでいきましょう」


『はい!!』


「いやだね! お前みたいなロボットに教わるくらいなら死んだ方がマシだ!!」


「そうですか。では、万引き常習犯の君には地獄に行ってもらいます」


「な、何の話だ?」


「昨日、あなたの父親が白状しましたよ。息子のこれまでの愚行を全部言うから自分は見逃してくれと」


「あのクソ親父! 許さねえ! ぶっ殺してやる!」


「そんなことをすればあなたはここにいられなくなります」


「構わねえ! 俺のことを駒としか思ってねえあいつを今すぐボコボコにしてやる!!」


「では、その前にボクを倒してみてください」


「何?」


「できないんですか?」


「うるせえ! 俺は不可能を可能にする男だ! うおおおおおおおおおおお!!」


 無理でした。


「くそー! 勝てねえ! お前強いなー!」


「そういう設定なので」


「そっかー。でも、なんかスカッとした。ありがとよ、先生」


「どういたしまして。それではこれより授業を始めます」


「先生、窓ガラスが割れてて寒いでーす」


「そうですか。では、透明な膜で補強しておきますね」


「先生、この教室ホコリっぽいでーす」


「そうですか。では、授業を始める前にみんなで教室をきれいにしましょう」


『はーい!』


 翌日、権力者たちの黒い噂は煙のように消え失せた。


「星の王、ご協力ありがとうございました」


「いやいや、あんなの朝飯前だよ」


「あなたにとってはそうでしょうがボクたちにとってはそうではありません。本当に感謝しています」


「どういたしまして。えっと、これからどうする? 飲食業界とかIT業界とかあるけど」


「そうですねー、とりあえず各業界に一機ずつ配備してみていけそうだったら徐々に数を増やしていきます」


「そっか。じゃあ、そのことを幼馴染あいつに伝えておくよ」


「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」


「ああ」


「お義兄にいちゃん、もうすぐ昼休み終わっちゃうよー」


「おー、そうか。じゃあ、またな」


「はい、また」


 僕は『勧善懲悪くん』の今後に期待しながら屋上を後にした。

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