どこ情報だ?
とりあえず気づかないフリをしよう。
雅人が夏樹(雅人の実の妹)の方に目を向けると、そこに夏樹はいなかった。
童子が彼の袖を引っ張る。
「な、なんだ?」
「夏樹さんが私たちの後ろを歩いていた例の人物と接触しています」
な、なんだって!?
「ねえ……さっきいたよね?」
「何のことだ?」
夏樹はニッコリ笑う。
「私たちがー、楽しくー、お寿司を食べてる時にー、私たちのとなりにいてー、私たちの食べようとしてたお寿司をー、横取りしてたのはー、あなたですよねー?」
「心当たりがないな」
夏樹は黒い長髪でそいつを拘束する。
「とぼけないでよ! 私の髪は普通の人の髪とは違って一本一本に五感があるの! だから、あなたが横取りしてたことは私の髪が全部知ってるの!」
「夏樹! 落ち着け!!」
彼が彼女の元に駆け寄る。
「お兄ちゃん! こいつは私たちの食事の邪魔をしたんだよ! もうそれだけで罪だよ!」
「たしかにそうかもしれないが、たしかな証拠がないとダメなんだ!」
童子が夏樹の背中に『止』と書く。
「落ち着いてください。まずは事情を聞きましょう」
「ま、まあ、そうだな」
童子が空中に『解放』と書いて、それをそいつに向けて放つ。
そいつが地に足をつけると、そいつは口を開いた。
「この力……お前、やはり文字使いか?」
「文字使いのことを知っているのですか。それで? 目的はなんですか? 私ですか? それとも……」
そいつは僕の方に目を向ける。
「え? もしかして僕か?」
「鬼の力を宿していながら、人であろうとする少年がいるという噂は本当だったのだな」
どこ情報だ?
「あんたはいったい何者なんだ? 僕に何の用だ?」
「場所を変えよう。ここは危険だ」
危険?
「分かった。じゃあ、うちまで来てくれ」
「……ああ」
こうして、四人と一匹は山本家に向かったのであった。