明日が来なくなった
次の日(?)の放課後、僕は夏樹(僕たちの妹)とデートをした。その次の日もそのまた次の日も僕は夏樹とデートをした。今日も夏樹と放課後デートをする。場所は実家の近くにある公園だ。
「なあ、夏樹」
「なあに? お義兄ちゃん」
「お前、明日が来ないようにしてないか?」
「私にそんな力はないよ」
「この世界のどこかに万物の時を司る『万物時計』というものがある。時計の針の動きを逆転させると時を巻き戻し、時計回りに回すと時を早送りできる」
「私、そんな時計知らないよ」
「そうか。じゃあ、どうしてニュースの内容や給食の献立がずっと同じなんだ?」
「そんなことないよ」
「夏樹、頼むから本当のことを言ってくれ。あの時計を動かせるのはアレと同等かそれ以上の力を持ってるやつだけなんだ」
「へえ、そうなんだ」
「夏樹」
「私を一生一人にしないって約束できるんだったら話すよ」
「そうか。約束できないことはないが、お前が知りたくないものや見聞きしたくないものと向き合うことになるぞ」
「うん、いいよ」
「即答したな」
「うん」
「そうか。じゃあ、約束だ。僕と夏樹はこれからずっと一緒だ」
「うん! ありがとう、お義兄ちゃん。大好き」
「はいはい。さて、そろそろ白状してもらおうか」
「私がやりました」
「即答したな」
「うん」
「あの時計は十秒ごとに別の宇宙に移動してるから見つけるのは相当難しいはずなんだがなー」
「そうなの? 呼んだら来たよ」
「はぁ?」
「おいでおいでー」
「ホー、ホー」
「ほらね?」
「見た目はフクロウ。全身に十二までの数字が散りばめられていて、おなかに大きな時計が一つ……間違いない『万物時計オウルタイム』だ」
「ホー、ホー」
「いつから呼べるようになったんだ?」
「えーっと、デートプラン立ててる時に呼んだらなんか飛んできたから、ここ最近だよ」
「そうか……。まあ、今回は僕との思い出を作るために使ったからペナルティは明日寝癖がすごいことになるくらいだろうな」
「え? そんなのあるの?」
「ああ」
「そっかー。じゃあ、この子はお義兄ちゃんに預けておくね」
「え? いや、いいよ」
「いいからいいから、ね?」
「ホー、ホー」
「ほら、この子もいいって言ってるよ」
「そ、そうか。じゃあ、預かっておくかな」
「よかったね、オウルン」
「ホー、ホー」
「はぁ……やれやれ」




