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向こう側の客

 今日は外食。

 回転寿司。


「ねえねえ、お兄ちゃん。何食べたい?」


「え? あー、そうだな。じゃあ、タコで」


 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は流れてきたお皿に手を伸ばした。

 すると、向こう側の客が目当ての物をスッと奪い取った。


「あ、あれー? おかしいなー。今たしかにタコが乗ったお皿を取ろうとしてたのになー」


夏樹なつき。僕のことはいいから、お前の好きな物を食べていいぞ」


 少し怒り気味の夏樹なつきを落ち着かせる雅人まさと

 彼の膝の上で向こう側の客に目を向ける童子わらこ


「分かった。じゃあ、注文しよう。えーっと、たまごといかと……」


 夏樹なつきはタッチパネルを器用に扱う。

 その間、僕と童子わらこは小声で話しをしていた。


「なあ、さっきの絶対わざとだよな?」


「はい、間違いありません。しかし、相手もバカではないようです。監視カメラの死角をうまく利用していますから」


 厄介だな。

 こちらが訴えてきた時、自分がやったという証拠が監視カメラに残らないようにしているから妨害したと言い張っても証拠不十分で無実になるパターンだ。


「お兄ちゃん、新幹線来たよ」


「ん? あー、そうだな。取り忘れないように気を付けろよ?」


 夏樹なつきはおいしそうにお寿司を食べ始めた。

 もちろん、後頭部にあるもう一つの口からだが。


「さすがに新幹線には手を出さないみたいだな」


「複数の皿が乗っていますからね。リスクを最小限にしつつ奪い取る。それが向こうのやり口のようです」


 僕の頭の上に乗っている白猫が僕の頭を軽く叩く。


「ねえねえ、ダーリン。マグロ食べたいから取ってー」


「ああ、いいぞ。おっ、ちょうど流れてきたな。夏樹なつき、マグロを取ってくれないか?」


 夏樹なつきは「はーい」と言いながら、マグロの乗ったお皿に手を伸ばした。

 しかし、それは向こう側の客の手に渡ってしまった。


「……あれー? おかしいなー。今たしかに取ろうとしてたのにー。どうしてかなー?」


夏樹なつき。ほら、口開けろ。いかだぞ」


 彼は妹の怒りをしずめるために、いかの力を借りた。


「え? 食べさせてくれるの? やったー!」


 おいしそうに、いかを咀嚼そしゃくする夏樹なつき

 後頭部にあるもう一つの口から「うまい! うまいぞ!」という声が聞こえる。


「さて……どうしたものかな」


 楽しくお寿司を食べたいが、このままではそれができない。

 ならば、やることはただ一つ。

 向こう側の客を刺激することなく、しょくす!

 ただ、それだけだ!!

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