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ナメクジウオミクロンは死なない
ナメクジウオの突然変異体……それが『ナメクジウオミクロン』である。『緑色蛍光タンパク質』が通常個体の『十五』倍近く体内に存在しているため通常の個体より頭部が明るく発光している。やつの全身を覆っている特殊な薄い膜が常時『不幸中の幸い』を発動しているため死ぬことはない。
「今日も海は元気だなー」
ナメクジウオは渦潮に巻き込まれてしまった。しかし、なぜかピンピンしている。
「どんなに酷い目に遭ってもなぜか生き残っちゃうんだよねー」
やつは自然に適応し流れに身を任せることであらゆる困難を安易に突破してきた。
「君は今年で何歳になるんだっけ?」
「五億年は生きてると思うんだけど……どうだったかなー」
「そうかー。自分にいつか死期が来ると思うか?」
「うーん、どうだろう。今まで何があっても死ななかったからなー」
「地球が消滅しても生きていけそうだな」
「うーん、どうだろう。まあ、きっとなんとかなるよ」
「そっか。じゃあ、またな」
「うん、またね、星の王」




