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寿司

 今日はみんなで外食です。


「久しぶりに来たな……回転寿司」


「だねー」


 雅人まさと夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は店の前で立ち尽くしている。


「何をしているのですか? さっさと中に入らないと、今日の晩ごはんを食べられませんよ?」


「そうだよ、二人ともー。ほら、早く入ろうよー」


 座敷童子の童子わらこと家出中の白猫がそう言う。


「あ、ああ、そうだな。じゃあ、入ろうか」


「うん!」


 夏樹なつきは家を出てから、ずっと彼の腕にしがみついている。

 それを見せつけられている童子わらこは少しだけ目つきが怖くなっている。


「えっと、三名と一匹ですね」


「はい、お願いします」


 妖怪と人間が共存できるようになるまでは衛生的にペットの入店はお断りさせていただくというものがあったが、今はそんなものはない。

 妖怪と人間が共存しているということは、獣人型の妖怪も食べに来るということなので、ちゃんとしつけられていれば動物だろうと神だろうと入店できる。

 しかし、そのシステムがいつできたのかを知るものは今のところいない。

 僕の知り合いにはいないという意味だが、大人も知らないというのは、どうもおかしい。


「お兄ちゃん! お寿司だよ! お寿司!」


「ん? あー、そうだな。今日はじゃんじゃん食べていいぞー」


 夏樹なつきは「やったー!」と言いながら、成長中の胸を彼の腕に当てる。

 その様子を見ていた童子わらこは自分の胸に両手を置いた。

 まさか、負けている?

 いやいやいや、さすがにそんなことは……。

 童子わらこはそれ以上考えるのをやめた。


「えっと、席は……」


「はい! 私はお兄ちゃんのとなりがいいです!」


 夏樹なつきはピシッと手を挙げている。

 今日はいつも以上に元気だ。


「はいはい、分かったよ」


「では、私は雅人まさとさんの膝の上に……」


 は?


「おい、ちょっと待て。なんでそうなるんだ?」


「別にいいではありませんか。客観的に見れば、膝の上に妹か親戚の子を乗せているようにしか見えません」


 そういう問題じゃなくてだな。


「それだと僕が食べにくいだろ」


「大丈夫です。私が食べさせてあげますから」


 どこのバカップルだよ!


「じゃあ、私はダーリンの頭の上ねー」


「あー、うん、分かった」


 は?


「差別です! 今のは完全に差別です!」


「いや、食べる時に邪魔にならないからいいかなーって」


 何ですか! それは!!


「お兄ちゃん。童子わらこちゃんの願いを叶えてあげてよ。ねえ?」


「……お、お前がそう言うのなら、仕方ないな」


 やったね! 童子わらこちゃん!

 やりました。


「じゃあ、食べるか」


「うん!」


 その様子を遠くから見ていたものは汚い笑みを浮かべた。

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