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ムサンヨウチュウ
海の掃除屋『ムサンヨウチュウ』。死骸を食べ終わると霧散する習性がある。何度か水族館まで運ぼうとしたが全て失敗している。霧散している間、肉体と魂はあの世にあるからだ。一応『捕獲結界』なら捕まえられるが黙っておこう。
「見せ物にされるのは気持ちのいいものじゃないからな」
「だーれーかー、たーすーけーてー」
波打ち際にひっくり返っている『ムサンヨウチュウ』がいる。
「はいはい」
「ふぅ、助かったー。お礼は何がいい?」
「いらないよ。それより人が来る前に海に戻った方がいいよ。しゃべれる個体は珍しいから」
「そうなのー? 深海にはたくさんいるよー」
「そうなのか。じゃあ、なんで君はこんなところにいるんだ?」
「私、あんまり霧散するの得意じゃないんだよねー」
「そうか。まあ、最初は難しいよな、座標を固定するの」
「そうなんだよねー」
「まあ、そのうちできるようになるさ」
「だといいんだけど。じゃあ、私そろそろ帰るね」
「うん。気をつけてね」
「はーい」




