スピカイアの目的
おとめ座のスピカには『スピカイア』という謎の生き物が生息している。万物を糧とするため他の生物が存在していなくても生きていける。彼らは空や海、宇宙などを浮遊し悠々自適に暮らしている。
「ただし、彼らを怒らせると太陽のエネルギーを圧縮した光線で攻撃してくる」
「はい、そうです」
「うーんと、なんでそんな歩く時限爆弾みたいなやつが地球にいるんだ?」
「ただの観光です」
「観光か。見ておきたい場所とかあるのか?」
「地球のデータは収集済みです。なので私は今からあなたのデータを収集します」
「なんで僕なんだ?」
「あなたが地球初の星の王だからです」
「そのデータを持ち帰っていったい何をするつもりなんだ?」
「あなたの像を作り、全宇宙にあなたの良さを発信します」
「そんなことしなくていいよ」
「なぜですか?」
「すでにそこそこ有名だからだよ」
「なるほど。では、記念撮影をしてから帰ります」
記念撮影か。まあ、それくらいならいいだろう。
「分かった。じゃあ……」
「ちょっと待ったー!」
「どうした? 夏樹」
「お前の星では男女が一緒に写真を撮ることは婚姻の儀とされているそうだな?」
「……ちっ」
今、舌打ちしたんだが……。
「あー、そういえば、そうでしたー。ごめんなさーい」
「白々しい。今すぐ八つ裂きにしてやろうか?」
「落ち着け、夏樹。三人で撮れば問題ないだろう?」
「うーん、まあ、そうだね」
「お前もそれでいいか?」
「いいよー」
「よし、じゃあ、撮るぞー。はい、チーズ!」
スピカイアが持ってきた『白いカメラ』で写真を撮ると三人のデータがそこに集まった。
「母星に帰ったらみんなに伝えておけ。僕たちがこの星にいる限りお前たちのような地球外生命体にこの星は渡さないとな」
「へえ、気づいてたんだ」
「滅多に違う星に行かないお前がこの星に来た時点で気づくさ」
「だよねー。まあ、星の王とその妹に会えてよかったよ。星の王と家族になってじわじわ侵略しようと思ってたけど、妹と家族になるのも悪くないって思えたから」
「やめろ、気持ち悪い」
「あれ? もしかして照れてるの?」
「照れてない」
「そうなの? まあ、気が変わったら呼んで」
「死んでも呼ぶもんか」
「はいはい。じゃあ、またね、お二人さん」




