セイウチとかライオン好きそうだな
例の親子の問題を解決したら道着の付喪神が僕に『永久不滅拳』と『諸行無常拳』の使い方を教えてくれた。いや、別にいらないのだが……。うーん、まあ、いいか。
「ただいまー」
「あっ、お義兄ちゃんおかえりー」
「ただいま、夏樹。ん? その本はなんだ?」
「あー、これ? 最近売れてる本だよ」
「へえ、そうなのか。面白いのか?」
「うーん、よく分かんない」
「そうか。じゃあ、あらすじを教えてくれ」
「序盤で主人公が死んで」
「死ぬのか……」
「なんか別の世界に転生して」
「ふむふむ」
「なんやかんやあって『すごい力』を手に入れて」
「ほうほう」
「ハーレム作るみたいな感じかな」
「作者はセイウチとかライオン好きそうだな」
「私にはよく分かんないけど、オスってそういうものなの?」
「うーん、どうだろう。お金を稼ぐのが好きなのもいれば、女の子たちとイチャイチャするのが好きなのもいる。それから強くなりたいやつやかっこよくなりたいやつ、いろんなことを知りたいってやつもいるな」
「ふーん、そうなんだ。つまり、この本には作者の欲望というか理想の人生が書かれてるんだね」
「まあ、そんな感じだな」
「そっかー。私も書いてみようかなー」
「そうか。じゃあ、とりあえずジャンルを決めようか」
「ジャンルかー、うーん……私とお義兄ちゃんの話でいいや!」
「えーっと、それはラブコメでいいのか?」
「ううん、日常系だよ」
「そうか。じゃあ、書けたら持ってきてくれ。あっ、原稿用紙いるか?」
「必要ないよ、自由帳いっぱい持ってるから」
「そうか。じゃあ、区切りのいいところまで書けたらリビングに持ってきてくれ」
「はーい!」




