おやすみ、ブレイン
僕はアリシア・ブラッドドレインをブレイン(発明の専門家)の部屋にあるベッドまで運ぶと星の王専用の後継者製造機の中に素材を入れ始めた。
「おーい、ブレイン。後継者製造機の中に媚薬入ってたぞー」
「またー?」
「今度は誰が入れたんだろうなー」
「さぁ? 誰だろうねー」
「まあ、いいや。えっと、僕の血液を少々とこの世に存在する全ての物質と『はじまりの吸血鬼』の唾液を入れて……」
「あとはスイッチを押すだけだよー」
「そうか。じゃあ、押すか」
「あー、ちょっと待って。まだ性別をどうするか決めてないよ」
「性別かー。星の王の後継者だから男でいいんじゃないか?」
「うーん、まあ、そうなるのかなー。というか前から気になってたんだけど、お兄ちゃんって性別あるの?」
「え?」
「ほら、お兄ちゃんの体は雅人のものだから男だけどお兄ちゃんの本体は希望でしょ? だから性別あるのかなーって」
「うーん、どうなんだろう。検索してみるか。検索『希望』『性別』っと。うーん、ないみたいだな」
「え? ないの?」
「ああ。希望は生き物じゃなくてエネルギーの塊みたいなものだから性別はないんだってさ」
「そっかー。じゃあ、星の王の後継者も性別なしでいいんじゃない?」
「そうだな、そうしよう」
「お義兄ちゃん!」
「おー、夏樹か。どうした? 何かあったのか?」
「私の体変なの……なんかすごくふわふわしてて」
「ふわふわ? よし、診てみよう」
僕が夏樹(僕たちの妹)の額に手を当てると夏樹の顔が真っ赤になった。
「どうした? 顔真っ赤だぞ?」
「そういえばなんか体が熱い……というか眠い」
「おいおい、大丈夫か?」
「大丈夫。ああ……お義兄ちゃんが私のそばにいる。幸せー」
夏樹はそう言いながら僕に体を委ねた。
「おーい、夏樹ー、大丈夫かー?」
夏樹はスウスウと寝息を立てている。
「寝てるな」
「寝てるねー」
「なあ、ブレイン」
「なあに?」
「これって僕が例の吸血鬼と接触したせいだったりするのかな?」
「さぁ? どうだろう。でも、今は落ち着いてるからしばらくそのままでいいんじゃない?」
「そうだな。えっと、後継者作りは一旦保留にするけどいいか?」
「いいよー。じゃあ、その間に私と……」
「断る」
「最後まで言わせてよー」
「言わなくても分かる。後継者作ろうって言うつもりだったんだろ?」
「まあねー」
「ブレイン、お前カードバトルで僕に負けてからなんか少し変だぞ?」
「そんなことないよー」
「じゃあ、なんでニヤニヤしてるんだ?」
「さぁ? なんでだろう。でも、お兄ちゃんのことを考えるだけで体が熱くなるからきっとこれは恋だよー」
「そうか。じゃあ、お前もこっちに来い。横になれば多分楽になるから」
「はーい。じゃあ、お邪魔しまーす」
「ブレイン、ベッドを少し大きくしてもいいか? 定員オーバーだから」
「いいよー」
「ありがとう。えいっ」
「おー、これが『えいっ』かー。お兄ちゃん、どんどん強くなるねー」
「そうだな。おやすみ、ブレイン」
「うん、おやすみー」




