ブラックホールとホワイトホールにいるよー
山田、元気にしてるかなー。山田は山にいた。
「山田ー、そろそろ僕の後継者になってくれないかー?」
「俺がお前の後継者? お前より弱い俺が後継者になれるのか?」
「星の王になれば僕より強くなれるから大丈夫だよ。多分」
「多分ってなんだよ、多分って」
「いや、だって、僕がこの地球の初代星の王だから後継者が初代より強くなるのか弱くなるのか分からないんだよ」
「他の星の星の王はどうなんだ?」
「他は一緒だよ」
「じゃあ、一緒だろ」
「そうかなー? もしかすると地球だけ例外かもしれないよ」
「そうか。じゃあ、ちょっと星の王になってみてもいいか?」
「え? 今?」
「ああ、そうだ。ダメか?」
「うーん、どうだろう」
「あー、ごめん。君は星の王にはなれないよ」
「あっ、アースちゃん。久しぶり」
「久しぶりー」
「雅人、そいつはなんだ?」
「元星の王の代理……まあ、地球の化身みたいなものだよ」
「そうか。というか、俺が星の王になれないってどういうことだ?」
「君、龍神に憑かれてないでしょ?」
「あー、鬼には憑かれてるけど龍神には憑かれてないなー」
「アースちゃん、説明してくれ。僕のあそこにいる龍神はいったい何なんだ?」
あそこ? あそこってどこだ?
「アレは判子みたいなものだよ。星の王になれる素質がある者に取り憑き、星の王のサポートをする存在。それがあの龍神の正体だよ」
「そうだったのか……」
「なあ、あそこってどこだ?」
「男の下腹部にあるだろ? 蛇みたいなのが」
「あー、アレか。えっと、つまり、とりあえず龍神に憑かれてないとダメってことか?」
「そうだよー」
「マジかー。でも、まあ、修行は好きだからこれからも続けるかー」
「そうしてくれ。アースちゃん、僕の他に龍神に憑かれてるやつはいるか?」
「そんなのこの星にいないよー」
「いやいや、一人くらいはいるだろ」
「いないよ。龍神に取り憑かれた時点で体内の霊力が暴走して死ぬんだから」
「そうなのか? でも、僕は死んでないぞ?」
「それは多分、最悪の厄災である鬼姫ちゃんと希望であるあなた……つまり、雅が死んで間もない雅人の体に入ったから龍神に取り憑かれても大丈夫だったんだと思うよ」
「なるほど。僕は超レアな存在だったのか」
「まあ、そうなるねー」
「なあ、範囲をもっと広げてみたらどうだ? この星だけじゃなくてこの星の外とかこの宇宙の外とかにいる可能性あるだろ?」
「ナイスだ! 山田! アースちゃん!」
「もうやってるよー。検索終了! 結果は……数人!」
「よし! で? そいつらは今どこにいるんだ?」
「ブラックホールとホワイトホールにいるよー」
「マジかー。じゃあ、ちょっと行ってみるかー」
「そうしよう、そうしよう」
「おい、ちょっと待て。お前らそんなところに行ったら確実に死ぬぞ」
「山田、お前はクマノミがイソギンチャクの触手に触れても平気な理由知ってるか?」
「え? うーん、昔から仲がいいから?」
「おしい。正解はクマノミの体表を覆う粘液の化学組成がイソギンチャクの粘液の化学組成に似ているからだ」
「つまり、仲間みたいなものだから平気なんだな」
「そういうことだ。つまり、僕たちがブラックホールやホワイトホールに似た性質を持つ結界で全身を覆えば」
「中に入っても平気ってわけだな」
「そういうことだ」
「雅人ー、準備できたー? そろそろ行くよー」
「分かった、すぐ行く。山田、僕たちがいない間地球のこと頼んだぞ」
「ああ! 任せろ!!」
「ありがとう。じゃあ、いってくる」
「おう! 必ず帰ってこいよ!」
「ああ!」




