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レース当日

 レース当日。私は鏡に映る自分の両翼を見た。やはり小さい。だけど、今年のコースはクネクネしているから素早く動ける私が有利。毎年ズルして優勝してるテノドーンなんかに負けてたまるか。


「行くのか、プラン」


「ノラン兄さん、止めても無駄だよ」


「みんなの希望になりたいからか?」


「うん」


「はぁ……正直不安だが全プテラノドンの中で最高にかわいい妹を応援しないわけにはいかないからな。一応、サポートはするが僕に負けても泣くなよ」


「テノドーンに対して弱腰な兄さんに負ける可能性はほぼないよ」


「言ったな? よし、今年は本気を出そう」


「はいはい」


「よし、じゃあ、行くか」


「うん」


 *


 レースはコースを三周してゴールにいる星の王とハイタッチすれば終わる。去年までは村長だったが今年は風邪をひいて寝込んでいるため星の王が代理になった。


「位置について! プテラノ……ドーン!」


 全員が一斉に飛び立つ。参加者は三百匹。優勝候補はテノドーン。兄さんは準優勝候補。私はおそらく眼中にない。


「星の王、今年は誰が優勝すると思いますか?」


「さぁ? でも、優勝候補は優勝しないと思うよ」


「どうしてですか?」


「明らかに目つきが他のと違うプテラノドンが二匹いるからだよ」


「なるほど。あーっと! トラップゾーンで半数近く脱落してしまったー!」


「今年はネットが丈夫なんだね」


「その通り! 今年はなぜか予算が多めだったためあれもこれも豪華なものになっているのです!」


「へえ、そうなんだー。あっ、先頭はもうゴールしそうだね。じゃあ、僕はこれで」


「はい! お気をつけて!!」


 優勝を掴み取れ。大空の勇者よ。


「な、なあ、お前ら。俺を優勝させてくれないか? 賞金はあとで山分けするからよー」


『断る!!』


「な、なんだと!? お前ら正気か!?」


「僕はもうお前の言うことは聞かない!」


「私はお前なんかに絶対に負けない!」


『優勝したいのなら自分でなんとかしろ!!』


「そうか。じゃあ、お前らをこのレースで再起不能にしてやるよ!!」


『やれるものならやってみろ!!』


「ああ! やってやるとも! おりゃああああ!!」


 テノドーンは他のプテラノドンよりでかいが、それ故に機敏な二匹についていけず三位になってしまった。


「ラストスパート!」


「ここで全ての力を!」


『出し切る!!』


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 *


「同着一位……プランとノラン。おめでとう」


「わ、私と兄さんが……同着?」


「マジかー。絶対勝ったと思ったのにー」


「ラストの直線、どっちもすごかったぞ」


「そ、そう……ありがとう、星の王」


「いやあ、それほどでもー」


「兄さん、調子に乗らないで」


「すまんすまん」


「テノドーン、お前は二人に鍛えてもらえ。卑怯な手を使って勝っても空しいだけだから」


「……二人ともすまなかった。俺が悪かった、許してくれ」


「私たちに勝つまで許してあげない」


「だな」


「そ、そんなー!」


「今のは冗談」


「けど、正直きついぞ?」


「だ、だとしてもやる! 俺、お前らに勝ちたいから!!」


「そう」


「なら」


『今日から始めようか』


「え? いや、その、今日は疲れてるから」


『問答無用!!』


「い、いやああああああああ! た、助けてー!!」


 はははは、これは逃げられないな。よし、じゃあ、帰るか。

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