なんとかなったな
こいつ、いつも僕に面倒な依頼押しつけてくるなー。
「羅々、余計なことに首を突っ込むのはあまりオススメしないぞ」
「ドーナツツジのドーナツはおいしいんだよ! 雅人は食べたくないの!?」
「お前って本当に自分の欲望に正直だよな」
「まあねー」
「褒めてないぞー」
「で? どうするの? ミドリガメになったお父さんを元に戻すの? 戻さないの?」
「戻すよ。母親がその亀を逃したら犯罪になるからな」
「そうだねー。じゃあ、現地に行こう!」
「ああ」
僕は『百々目鬼 羅々』と共に部室から出るとミドリガメになってしまった父親がいる家までテレポートした。
「お兄さん、お父さん元に戻せそう?」
「それは君のお母さん次第かなー」
「な、なんですか? 私は何もしていませんよ?」
「彼の体内にある小石。アレは呪われています。アレは願いをなんでも一つだけ叶えてくれますがその代わり死んだら地獄に落ちます」
「そ、そんなの私は知りません!」
「では、あなたの背中を見てもいいですか? そこに目玉のようなシミがあるはずなので」
「……ごめんなさい。私がやりました」
「お母さん……どうして……どうしてそんなことしたの?」
「あの人があんたばっかり愛でるからよ!」
「それってつまり、私のせいってこと?」
「そうよ! あんたのせいよ!!」
「そ、そんな……」
「君は悪くないよ。今回の事件は二人が話し合う時間がなかったせいで起きたんだから」
「そ、そうなの?」
「うん、そうだよ。それで? どうします? 彼を元に戻すのは簡単ですが、また似たようなことをするつもりなら僕たちは今すぐ帰ります」
「お、お願い! 帰らないで! そろそろ一人でやりくりできなくなってきてるの! だから、早くあの人を元に戻して!!」
「元に戻した瞬間、あなたの首を絞めるかもしれませんよ?」
「構いません! お願いですから早く元に戻してください!!」
「分かりました。小石よ、もういい。お前の役目は終わった。河原に戻れ」
「あっ、はい、わっかりましたー」
小石はそう言いながら河原に向かって飛んでいった。
「お、お父さん……!」
「あなた……!」
「二人とも……すまなかった! これからはちゃんと話し合うようにするよ!!」
「これからは小さな亀裂を放置しないようにしてくださいね」
「はい! そうします!!」
「このご恩は一生忘れません!!」
「お兄さん、おやつにしよう。ドーナツツジのドーナツあるからー」
「待ってました!」
「羅々、よだれよだれ」
「おっと失礼。それじゃあ、お言葉に甘えて……いっただっきまーす!」
「召し上がれー。はい、お兄さんの分」
「ありがとう」
「どういたしまして。それと、お父さんとお母さんの分」
『ありがとう』
「どういたしまして」
よし、なんとかなったな。これ食べたら帰ろう。




