隠密対決
星の王とぬらりひょんの戦いが今、始まる。
「隠密対決! 私に気づかれずに私の頭の上に置いてあるリンゴを完食した方が勝ち!!」
「おい、八代。リンゴじゃなきゃダメなのか? 絶対食べる時、音鳴るぞ」
「存在感がない人はね、自分以外の人が目の前にいても気づかれないんだよ」
「そうなのかなー」
「虫とか魚の擬態レベルならどう?」
「あー、たしかにそのレベルなら……でも、咀嚼音は消せないだろ」
「それはー、私への愛でなんとかして♡」
「お、おう」
なぜそこで愛……?
「私は余裕ですよ」
「できるのか? ぬらりひょん」
「隠密特化の私にはできます」
「そうか。じゃあ、お手本を見せてくれ」
「分かりました」
「じゃあ、始めるよー。よーい……ドン!」
僕はぬらりひょんの動きを観察し、やつの技術を体に覚えさせた。
「完食しました!」
「はーい。えーっと、タイムは……十秒ちょうど!」
「まあ、こんなものですかね。どうです? 星の王。できそうですか?」
「多分できると思う」
「多分ですかー。別にやりたくないならやらなくていいですよ? 私の勝ちは確定してますから」
「なぜそう言い切れるんだ? お前にはそうなる未来が見えてるのか?」
「そんなの知らなくても分かりますよ。私より気配を消すのがうまい存在なんているわけありません」
「もしいたらどうするんだ?」
「隠居します」
「そうか。分かった。八代、準備できたか?」
「いつでもいいよ」
「そうか。じゃあ、開始の合図をしてくれ」
「分かった。よーい……ドン!」
「完食した!」
「い、一秒ちょうど! すごーい!」
「あ、ありえない! この私が負けるわけがない!」
「アマビエ先生、こいつこんなこと言ってますよ」
「一応、審判だから言わせてもらうけど、ぬらりひょんの敗因はリンゴを丸飲みせずよく噛んでから飲み込んでいた点よ」
「はっ! そうか! 私も星の王同様リンゴを丸飲みすればよかったのか!!」
「まあ、そういうことだ。ということでこの勝負僕の勝ちだ」
「ま、まだだ! 三本勝負にしよう!」
「はいはい」




