二人とも私のために争って♡
次の日の昼休み。八代(諜報員)が僕のクラスにやってきた。
「山本くん、お昼ごはん一緒に食べませんか?」
今は優等生モードか。
「いいよ。どこで食べる?」
「中庭で食べましょう」
「分かった」
「私も一緒に食べたいなー。いいかな?」
夏樹(僕たちの妹)、来たー。
「もちろんです」
「やったー。じゃあ、行こっかー」
「おう」
「ええ」
中庭。
「星の王、私を食べて♡」
「お前なー、ど直球すぎるだろ。ほらー、お前のせいで夏樹が苛立ってるー」
「なあ、お前人を好きになったことはないんだよなー?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、なんで私のお義兄ちゃんにハニートラップ使ってるんだ?」
「星の王が強いから」
「そうかー。よし、じゃあ、今すぐ肉団子にしてやろう」
「夏樹、落ち着け。さっきのは会話の流れ的にお弁当のおかずを食べてほしいって意味だと思うぞ」
「その通り。でも、星の王と合体したいという欲求はゼロじゃない」
「今すぐ肉団子にしてやるー! そこを動くなー!」
「きゃー、怖いよー、助けてー、星の王。夏樹ちゃんに肉団子にされちゃうよー」
棒読み……。
「今のはお前が悪い。自分でなんとかしろ」
「えー」
「とりあえず四肢を切断するかー」
「ごめんごめん。謝るから許して」
「許さん。とっとと肉団子になれ」
「私が肉団子になっちゃったら私の許嫁が悲しむよー」
「何? その話は本当か?」
「本当だよー、信じてよー」
「じゃあ、許嫁の写真を見せろ」
「あー、写真は家にあるから地面に似顔絵描くね」
「おう、描け描け」
彼女は木の枝を使って地面に似顔絵を描いた。
「おい、『元』優等生。これ、ぬらりひょんだぞ」
「え? そうなの?」
「頭見れば分かるだろ」
「え? あー、まあ、そうだね」
「今気づいたのか……。で? お前、こいつと結婚するのか?」
「うーん、気配消すのうまいけど、星の王の方が強いから断るよー」
「それは困りますねー。妖怪が身を固めちゃダメなんて法律はないので好きにさせてくださいよー」
「民家に入って堂々とお茶を飲んでるやつが身を固める? しかも現役女子高生と? お前、頭大丈夫か?」
「はい、そうです。それとこの頭は生まれた時からこうなんです」
「お義兄ちゃん、あいつあんなこと言ってるよ。どうする?」
「八代、お前はどうしたいんだ?」
「ごめん、ぬらりひょん。私、星の王と結婚したいの。だから」
「星の王のどこが好きなんですか?」
「あなたより強いところが好き」
「そうですか。では、私がこの男に勝ったら私と結婚してください」
「勝てなかったら諦めるの?」
「はい、諦めます。きっぱりと!」
「そっかー。じゃあ、二人とも私のために争って♡」
「はい!!」
「え? あー、うん、分かった」
はぁ……なんでこうなるかなー。




