あっ、流れ星
僕と夏樹(僕たちの妹)は『蝶蜂院 八代』の家で天体観測をしている。
「今日は月がきれいだなー」
「月はあまり好きじゃない」
「どうしてだ?」
「太陽がいないと輝けないから」
「地球だって太陽なかったら今頃凍ってるよ」
「こんな星、今すぐ凍ってしまえばいい」
「それはいつでもできるからやらないよ」
「いつでもできるの?」
「できるよ」
「星の王ってなんでもできるんだね」
「そうでもないよ。この星の結末を変えることは今のところできないんだから」
「それって数年後に地球が滅ぶってこと?」
「詳細は言えないけど、地球は確実に滅ぶよ」
「そっか。じゃあ、その日が来るまであなたのとなりにいる」
「僕のとなりが安全とは限らないぞ」
「そういうのはどうでもいい。私がそうしたいだけだから」
「おい『元』優等生。縁側でイチャイチャするな」
「じゃあ、どこならいいの?」
「マグマの中ならいいぞ」
「いじわる」
「悔しかったらマグマでバタフライできるようになれ」
「そんなの人間には無理」
「やる前から諦めるのか?」
「やらないとは言ってない」
「そうかそうか。じゃあ、できるようになったら言ってくれ。火山まで案内するから」
「分かった」
「おい、夏樹。さらっと勧誘するな」
「半分くらい人間やめてるようなものなんだから大丈夫だよ」
「何が大丈夫なんだ?」
「人間やめても取り乱したりしないって意味だよ」
「うーん、まあ、たしかに八代なら大丈夫だろうが」
「……来る」
「ん? 何がだ?」
「死刑囚の集団」
「たまに来るのか?」
「うん」
「そうか。じゃあ、『因果応報壁』。よし、これで九割くらい無力化できるな」
「何? それ」
「この壁はね、壁の外側にいるやつらに対して因果応報まあやったらやり返される的なことを実行してくれるんだよ。誰かを殺そうとすると死ぬ、ターゲットに殺意を向けただけで死ぬ、耐久力はそんなにないけど戦場にあったら脅威になる壁だよ」
「じゃあ、何もしないのが正解なの?」
「うーん、静かにその場から去るのが正解かなー」
「そっか」
死刑囚の集団はその壁の能力により九割くらい倒れた。残りの一割はやつらの周囲の酸素濃度を弄って倒した。
「す、すごい。星を見ながら敵を倒せるんだ」
「こんなの全然すごくないよ。あっ、流れ星」
「ホントだ。きれい」
お義兄ちゃんもやり方は違うけど、こいつを勧誘してるなー。その後、死刑囚の遺体は水神様のごはんになった。




