エクスカリバーとインターホンと雷神の好物には触るな
僕は今、ヘラ様の背中を洗っている。
「夏樹、あまり殺気を出すな。それと湯船に口をつけてぶくぶくするのもやめてほしいなー」
「これでも八割くらい抑制してるんだよ! あー! イライラするー!!」
「九割にしろ」
「そんなの絶対無理!! あー! 今すぐ人妻の首をへし折りたい!!」
「夏樹、あとでたくさんよしよししてやるから今はまったりしてろ」
「はーい♡」
「すみません、ヘラ様。夏樹は重度のブラコンなんです」
「でしょうね。こんなに素敵な兄がいたら絶対好きになるわ」
「そうでしょうか? 僕はそんなにすごくありませんよ」
「謙虚ねー」
「ところで僕たちに何か話があるんじゃないんですか?」
「あー、まあ、そうね。えーっと、神様は信者がいないといけないんだけど、すでにあなたたちのファンクラブあるからそれは問題なさそうね。過去の実績はたくさんあるから神話はいくらでも作れるし、信者の願いごとは……依頼をこなすことで叶えてるし、あなたの場合土地というか星を守ってるから正直他の神にあいさつするくらいしか仕事ないのよねー」
「そうですか」
「あっ、一番大事なこと忘れてたわ。ねえ、あなたたちはこれからこの世界をどうしていきたい?」
「僕は……これからもこの星と夏樹と家族と困っている人や動物、それと人外を守るもしくは助けたいです」
「私は誰とでも結婚できる世界を作ってお義兄ちゃんと一生イチャイチャしたい!!」
対照的な二人。でも、それがいいのよねー。
「そう。じゃあ、私はあなたたちを養子にできるよう努力するわ」
「ヘラ様、それは難しいです」
「どうして?」
「母と『はじまりの針女』の目が黒いうちはおそらく誰も僕たちを養子にできません」
「父親は?」
「父は僕たちが元気でいてくれればいいと思ってるのであなたに危害を加えることはないと思います」
「そう。でも、私あなたたちのこと気に入っちゃったからこれからもちょくちょく会いに来るわよ」
「それは別に構いません。ただ養子の件はあまり期待しないでください」
「分かったわ。じゃあ、今度は私があなたの背中流してあげるわ」
「え? いや、さすがにそれは……」
「おい……もういいだろ。お義兄ちゃんの背中は私が流すからお前は湯船に浸かってろ」
おー、怖い。でも、あなたのそういうところ大好き♡
「うーん、じゃあ、私と夏樹ちゃんで彼の背中を流しましょう」
「……エクスカリバーとインターホンと雷神の好物には触るな。その条件が嫌ならお前を今ここで八つ裂きにする」
「いいわよー。さぁ、一緒に彼の体をきれいにしましょう」
「ああ」




