お前も苦労してるんだな
ヘラ様はオムライスをおいしそうに食すとリビングにあるソファに座りテレビを見始めた。
「旅番組、好きなんですか?」
「消去法で選んだだけよ」
「消去法?」
「私は騒がしいのと別に知らなくてもいい情報が苦手だから、のんびり見れる旅番組にしたのよ」
「そうですか。じゃあ、お風呂掃除してきます」
「ねえ、お風呂一緒に入る?」
「……え?」
「どうやら今すぐハーデスのところに行きたいようだなー」
「夏樹、落ち着け。えっと、それは色々とまずいような気がするのですが」
「大丈夫よ。夏樹ちゃんも一緒だから」
「うーん、それはそれで大変なことになりそうですが」
「大丈夫よ。二人に今後のことについて話したいだけだから」
「は、はぁ……」
「お義兄ちゃんは私が守る。人妻なんかに渡さない」
「そ、そうか。ありがとう、夏樹」
「どういたしまして」
「いいわねー、美しい兄妹愛。羨ましい。アレも子どもの頃はこんな感じだったわー」
「え? そうなんですか?」
「ええ、そうよ。でも、少しずつ……いいえ、なんでもないわ」
「……お前も苦労してるんだな」
「まあね。でも、私は今でもアレを愛しているわ。あなたが彼を愛しているように」
「そうか……。だが、お前にお義兄ちゃんを渡すわけにはいかない。処女性を取り戻したお前が一番危険だからな」
「あら、あなたの心配はしなくていいの?」
「は?」
「私、彼だけじゃなくてあなたのことも気に入っているのよ。昔の私みたいだから」
「その時はお義兄ちゃんが私を守ってくれるから大丈夫だ」
「まあ、そうだな」
「あー! 二人ともかわいい! 私の養子にしたい!」
「それは両親が困るのでお断りします」
「うんうん」
「あら、そう」
「じゃあ、お風呂掃除してきます」
「はーい。夏樹ちゃん、おとなりどうぞ」
「なんだ? 私に話しておきたいことがあるのか?」
「まあね」
「そうか。あっ、お前が私に何かしようとしたら全力で抵抗するからな」
「はいはい」




