簡単な魔法
白鳥は舐め回すように町を見ている。
「おい、視線がいやらしいぞ」
「そうか? それにしても最近の子どもは発育がいいなー。なんか味見したくなってきたなー」
「今すぐ地面に叩き落とされたいのか?」
「じょ、冗談だよー、冗談。というか、本当に人間と妖怪が共存してるんだな」
「鬼姫がまた暴れるかもしれないからな。目には目を妖怪には妖怪を……って感じだ」
「ふーん。じゃあ、人間に力を与えてみるか?」
「人類に火を与えたら怒ったくせに」
「そりゃ怒るよ。あいつが天から盗んだものなんだから」
「そうだったな。で? もし与えるとしたらどんな力を与えるつもりなんだ?」
「うーん、雷かなー」
「電気で十分だろ」
「そっか。うーん、じゃあ、飛行能力」
「飛べる機械があるからいらない」
「えー、じゃあ、不老不死」
「人間を不老不死にしてもそんなにいいことないぞ」
「そうなのか?」
「人間を不老不死にしたら死にたくても死ねないことに気づいた時、心が死んじゃうだろ?」
「そっかー。じゃあ、簡単な魔法を使えるようにしよう」
「『ただし悪事には使えない』を付け加えろ」
「分かった。えーい」
こうして人類は魔法を使えるようになった。




