無傷です
あっ! 帰ってきました!
「おかえりなさい! どこもケガしてませんか?」
僕たちが屋上に戻ってくると美山先生は僕たちのそばまで駆け寄ってきた。
「一応、無傷です」
「私も無傷です」
「そうですかー、よかったー」
「で? 先生はいつ人間やめるの?」
「夏樹、もう昼休み終わるからその話は放課後にしよう。な?」
「今やめたいです。私はいろんな人たちに狙われていますから」
「自分の身は自分で守りたいということですか?」
「はい。私の守護霊さんはとっても強いですけど、いつまでも頼りっきりなのは申し訳ないので」
「わ、私は別に気にしませんよ」
「じゃあ、あんたは今さっき私たちが倒した敵、一人で相手できるの?」
「で、できる……と思う」
「マザーはどこにいようと主人の命令に逆らえない。あんたの力でマザーをあの世に送ってもマザーの子どもたちを解放しない限りマザーは命令に従い続ける。どう? 勝てそう?」
「うーん、一応私も増殖できるから負けはしないが二人のように短時間で終わらせることはできないだろうな」
「誰かを守りながら戦うのは難しい。じゃあ、もし先生が戦いに参加できたとしたら?」
「……少しは楽になるな」
「そうよね。ということで今から先生を人外にします。細かい設定は昨日のうちに終わらせておいたから後はスイッチを押すだけで人間やめられるよ」
「あっ、そうなんですね。じゃあ、人間やめます」
「先生、本当にいいんですか? 人間やめたらしばらくの間、人間に戻れなくなりますよ?」
「大丈夫です。いつまで経っても幼女体型な私が人間をやめてもきっと誰も信じませんから」
「そうですか。夏樹」
「はーい」
「初めてなんだから優しくしないとダメだぞ」
「はーい。先生、こっち来てー」
「はい」
「目閉じて」
「はい」
「おでこ触るよー」
「はい」
「優しく……優しく……ポチッとな。はい、おしまい。もう目開けていいよ」
「え? 今ので人間やめたんですか?」
「うん、人外になったよ」
「そうですか。うーん、あまり実感ないですねー」
「でも、これで先生はいろんな場所に行けるようになったよ」
「パスポートはいらないんですか?」
「あの世に行くのにパスポートなんて必要ないよー」
「たしかにそうですね」
『あははははは!』
「先生の守護霊」
「なんだ? 星の王」
「先生が少しでもおかしくなったら念話で連絡してくれ」
「わ、分かった」
先生が人間に戻れるようになるのは三日後の昼。それまで何事もなければいいんだが。




