つまらない戦い
戦いは数で圧倒すれば勝てる。ただし例外あり。
「とりあえず敵の五感をシャッフルするか」
「いいねー」
「五感シャッフル!」
敵の五感がシャッフルされたことであちこちで同士討ちが始まった。あちらの戦力は無限だがマザーを倒せばなんとかなる。
「くそ! やられた! おい! マザー! 五感がなくても動ける化け物を作れ!!」
「い、いきなりそんなこと言われても……」
「とっとと作れ!! さもないとお前の醜い子どもたちの命はないぞ!!」
「わ、分かりました……え、えーい」
「よおし、それでいい。いけー! 敵はたった二人だ! 殺してしまえー!!」
なるほど、そういうことか。
「夏樹、化け物を生み出しているマザーは偉そうな人間の指示に嫌々従っているだけだから間違ってもマザーは倒すなよ」
「はーい」
「ヒャッハー! 背中ががら空きだぜー!!」
「ただの急所突き」
「ぎゃあ!」
「私の髪は私を守るために勝手に攻撃してくれるの知らないの?」
「そ、そんな情報……知ら、ない……」
「ねえ、お義兄ちゃん、早くこのつまんない戦い終わらせようよ」
「そうだな、終わらせよう。『悪夢のはじまり』」
マザー以外の化け物どもは夢の中であらゆる苦行を強いられている。終わりがないのは誰だって怖いんだよ。
「この技の効果はマザーから生まれたもしくはこれから生まれてくる化け物に適用されるからこれでこのつまらない戦いはほぼ終わったよ」
「そうなの? やったー! ねえねえ、マザーはどこにいるの?」
「えっと、たしかこのへんに……あー、いたいた。夏樹、僕の手を握ってくれ」
「はーい! あー、お義兄ちゃんの手握るとすごく安心するー」
「はいはい。じゃあ、テレポートするぞー」
「はーい」
「えいっ!」
「くそ! 何もかも全部お前のせいだ! これで私のクビは確定だ! 今日中にあのロリ教師の守護霊を倒してロリ教師を私の奴隷にする計画だったのに……何なんだ! あの兄妹は!! おい! マザー! あいつらを倒せる化け物を早く産め! 産まないとお前の醜い子どもたちの命はないぞ!!」
「その娘たちの体内にある爆弾はさっき僕が取り除きました」
「だ、誰だ! ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!」
『こんにちは、お前を殺しに来ました♪』
「ひゃ、ひゃあ! おい! マザー! あの化け物をどうにかしろ! 命令だ! 早くあいつらを殺せ!」
「お断りします」
「な、なぜだ! 早くなんとかしろ!」
「子どもたちが解放されたので私はゆっくり休みます。おやすみなさい」
「な、なんだと! くそー! こうなったら……来い! 絶命シリーズ!!」
「うわー」
「怖いよー、お義兄ちゃん助けてー」
「そうか、怖いのかー。じゃあ、兄の方は私が殺してやる。妹はこっちに来い。私の奴隷にしてやる」
その直後、私の四肢は動かなくなった。
「な、なんだ? いったい何がどうなってるんだ?」
「お前の手足を固定しただけだ。安心しろ、死にはしない」
「お前はお義兄ちゃんを殺そうとした」
「お前は夏樹を奴隷にしようとした」
『お前のようなクズはこの世界に必要ない。さっさと地獄に落ちろ』
「ま、待て! 金ならいくらでも出す! だから命だけは助けてくれ!!」
「お金ならもう誰よりも持ってるからいらないよ。開け、地獄の門」
「ま、待てー! お願いだ! 今回だけは見逃してくれ!!」
「諦めろ、お前の地獄行きは確定してるんだよ。じゃあな、来世で会おう」
「じゃあねー、ばいばーい」
「ま、待てー! なんでもするから許してくれー!」
『じゃあ、地獄に落ちろ♪』
「や、やめろ! やめてくれー! 私はまだ死にたくないんだー! う、う……うわあああああああ!!」
地獄の門が閉じると部屋は静かになった。
「マザーのかわいい子どもたち、君たちを故郷まで連れていってあげるからマザーの周りに集まってー」
『はーい!』
「あっちよー、あなたたちのマザーはあっちにいるわよー」
『はーい!』
「よし、みんなを故郷に帰してやろう。えーい」
『お兄ちゃん、お姉ちゃん、また会おうねー!』
「おう、またなー」
「またねー」
「……よし、じゃあ、帰るか」
「うん!!」




