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先生の守護霊は何か言いたそうにしている

 美山みやま先生の体は成人済みとは思えないほど小さく華奢だった。私は先生の体のデータを髪の毛に保存しながら先生の体を拭いた。


「はい、おしまい」


「お、おい」


「何?」


 先生の守護霊は何か言いたそうにしている。


「言いたいことがあるならはっきり言って」


「そ、その……お前の目的はいったい何なんだ?」


「目的なんかないよー、私は私のお義兄にいちゃんの妹だよ」


「それは知っている。私が知りたいのはお前の目的だ。何かあるだろう? 世界征服とか宇宙独占とか」


「特にないけど……でも、まあ、お義兄にいちゃんと結ばれるためならなんでもするかなー」


「法律を変えるのは難しいぞ」


「そうかなー? 人間たちが寝てる間に脳を弄れば私の操り人形にできるからそんなに難しくないよー」


「じ、実の兄妹の間に生まれた子どもは奇形児になる可能性が高いぞ」


「それは組み合わせ次第だよね? 人間には難しいかもしれないけど、私はそういうの分かるから問題ないよ」


「も、もしそれが成功してもきっとその子どもは幸せになれないぞ」


「世間がそれを許さないってこと?」


「そ、そうだ」


「あのね、人の評価ばっかり気にしてたら何もできないわよ。というか、そんなことにはならないわよ。私が全人類の脳を弄れば解決するから」


 な、なんだ、こいつ……。常識が通用しない。自分の考えが正しいと思っている。よ、抑止力が必要だ。はっ! そうか! 雅人まさとが抑止力なのか!


夏樹なつきー、もうそっちに行ってもいいかー?」


「いいよー」


「どうした? 守護霊。トラウマになるようなものでも見たのか?」


「お、お前の妹、頭おかしくないか?」


「うーん、まあ、ちょっと変わってるよね」


「ちょっと……だと?」


「うん、ちょっとだよ。というか、正常な脳みそを持ってるやつなんているのか?」


「え?」


「脳の最優先事項は『生存』だ。生き残るためならなんでもしようとする。ほら、ゾンビものとかでよくあるだろ? ゾンビになりかけてるもしくはゾンビになった仲間を手にかけるシーン」


「そ、それは……」


「災害時、水を分けてほしいと言われペットボトルを渡したら逃げられた……なんてことが起こるのはどうしてだ?」


「い、生き残るため」


「そうだな。生き残るためだ。脳はそういう風にできてるから改善するには脳を弄るしかないんだよ」


「それ以外に方法はないのか?」


「催眠術とかでどうにかなるといいんだけどなー。アレは素人がやると一生そのままだったり、ある日突然解除されたりするから大きなコンピューターで全人類を操れるようになれば少しは改善するかもなー。さてと、じゃあ帰るか」


「え? あー、帰るのか」


「うん、今日の晩ごはんはうちの座敷童子が作ってくれてるから大丈夫だけど僕たちの帰りが遅いとみんな心配するからな」


「じゃあね、守護霊。先生に何かあったら助けてって念じてねー」


「お、おう……」


 二人はそう言うと部屋から出ていった。二人ともおかしい。異常と異常が拮抗している状態がいつまで続くのかは分からないが終わりの時が来たら諦めよう。神々でさえ匙を投げてしまったのだから。

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