古本屋とスカーレット・オーシャンとミラクルクラゲ
レティ(とある漫画家の妻)はアパートから少し離れたところにある古本屋にいることが多い。
「何かお探しですか?」
「いえ、別に」
「そうですか」
「ところでどうしてこんなところにあなたのようなクラゲがいるんですか?」
「ただのクラゲではありません。ミラクルクラゲです」
「ミラクルクラゲ……私が滅ぼした故郷のおとぎ話にそんな名前が記載されていたような気がします」
「故郷を滅ぼした? どうして?」
「私の名前はスカーレット・オーシャン。故郷である天色星の全ての生命を滅ぼした大量殺戮マシンです」
「なるほど。あなたは生命を奪うことに特化した機械なのですね」
「はい、そうです」
「今まで滅ぼした星の数はいくつですか?」
「十以上なのでたくさんです」
「なるほど。まあ、蚊や人よりマシですね」
「まあ、滅ぼした星の数を基準にするとそれらよりかはマシですね」
「ここにはよく来るんですか?」
「はい。暇なので」
「あなたが暇なのはいいことです。あっ、この本面白いですよ」
「どんな話なのですか?」
「非常識なお話しです」
「何も考えない方がいいですか?」
「考えてもこの世界ではこうなんだという答え以外出ないので考えない方がいいです」
「なるほど。しかし、薄いですね。すぐ読めそうです」
「原作は漫画です。これはそれと同じ作者が書いた小説です」
「なるほど。貴重な一冊ですね」
「はい、貴重です」
「では、今日はこれを買います。漫画の方も後日買います。あっ、もしかすると夫がすでに購入しているかもしれないので漫画の方は購入しないかもしれません」
「構いませんよ。このお店はあなたのような特殊な方しか来ませんから」
「それでお店を維持できるのですか?」
「このお店はあの世とこの世の狭間に存在しているのでエネルギー問題は霊力で全て解決できますし、本は現世であまり売れなくなったものもしくは現世の書店などに置かれてから一ヶ月ほど経つと自動的に同じものが転送されてきますし、正直お金はありすぎて困っているのでこのお店が潰れることはありません」
「なるほど。では、また来ます」
「はい」




