新しい漫画の神様
うーん、おかしい。こんな絵描いた覚えないぞ。
「なあ、セイローン。俺、こんな絵描いたっけ?」
「どの絵?」
「ここのコマの電柱に貼ってあるチラシだよ」
「ファーストペンギンになろうって書いてあるわね」
「そう、それ」
「え? もしかしてこれお兄さん描いてないの?」
「描いた覚えないよ。電柱は描いた気がするけど」
「そう。じゃあ、消す?」
「うーん、どうしよう」
*
「ねえ、お世話係ちゃん。漫画の神様、いる?」
「い、いえ、今は留守です」
「本当に?」
「……ご、ごめんなさい! 今のは嘘です!」
「そっか。じゃあ、中に入れてもらえるかな?」
「ど、どうぞ」
「ありがとう。あっ、もしここを追い出されたら僕のところに来るといいよ。うちには訳ありな娘が多いから」
「あ、ありがとうございます! 助かります!」
「それとしばらく外にいた方がいいよ。危ないから」
「は、はい! 分かりました!」
「よし、じゃあ、行くかな。おーい、漫画の神様ー、いるー?」
「な、な、な、何の用だ!」
「ねえ、なんで彼の漫画にあんな文章書いたの?」
「た、たしか『ファーストペンギンになろう』でしたっけ? えーっと、ですね、あれは……そう! 私のお世話係が書いたんですよ! 申し訳ありません。アレは昔から余計なことしかしないんですよー、ということで彼女は今日中に解雇します」
「……ねえ、一つ質問してもいいかな?」
「は、はい、何でしょう?」
「どうして彼女が彼の漫画に書いた文章を漫画の神様が知ってるの?」
「そ、それは……」
「地獄で頭冷やそうか。開け、地獄の門」
「お、お許しください! ちょっとしたイタズラのつもりだったんです!」
「僕はね、少し先の未来であの文章を読んだ読者全員が自決するのを知ってるんだよ。何がファーストペンギンだ。漫画の神様は仲間を……いや僕を突き落としてまで生き延びたいのか?」
「わ、私に恥をかかせたお前は私の敵だ! 例え地獄に落ちようと必ず復讐してやる!」
「そうか。漫画の神様がおかしくなったのは僕のせいなのか。でも、そんなこと言って大丈夫? このやりとり、いろんな神様が見てるよ」
「……ふぇ?」
「また会えるといいね。じゃ」
「お、お待ちください! なんでもしますからどうか今回だけはなかったことにしてください!!」
「きちんと反省しなさいって天照ちゃんが言ってたよ」
「そ、そんなー!!」
地獄の門が閉まると新しい漫画の神様がやってきた。
「私の時代来たー! あっ! 星の王だ! これからよろしくね!」
「うん、よろしく。それと君の初仕事は決まってるんだ」
「へえ、そうなんだー。で? 私は何をすればいいの?」
「君には彼の漫画のこのコマの文章を消してほしいんだ。あっ、記憶操作や情報操作は僕がやるから君はやらなくていいよ」
「オッケー! じゃあ、いくよー! それー!」
「……ありがとう。助かったよ」
「これくらい朝飯前だよー! 私、基本的に暇だから何かあったら連絡してね!」
「分かった。あー、そうそう君にお世話係は必要かな?」
「いらなーい。私、常にマイペースだからー」
「そう。じゃあ、彼女は僕の家に連れていくね」
「いいよー。よおし、とりあえずこの地味な部屋を魔改造するぞー!!」
「程々にね」
「はーい!!」




