カラスの恩返し
あの日から数日後。もしかしたら来るかもしれないなーと思っていたら本当に来た。
「ねえ、私のこと覚えてる?」
明け方、ゴミ出しをした後、俺は見知らぬ幼女に話しかけられた。
「うーん、どうだろう。あっ、そういえば数日前にカラスを助けたことがあったなー」
「あったねー」
「ん? なんで君がそのことを知ってるんだ?」
「そりゃあ知ってるよ。私、その時のカラスだもん」
「……え?」
「ほら、よく見て。烏羽色の長い髪と瞳とワンピースとビーチサンダル。そんな幼女がこんな時間に一人で出歩いてると思う?」
「うーん、出歩いてたら家出か孤児かと思うな」
「そうだね。でも、私はカラス。だから、いつどこにいても何も言われない」
「そうか。じゃあ、俺そろそろ帰るよ」
「待って。あの時の恩返しさせて」
「え? いや、別にいいよ」
「あなたのそういうところ嫌いじゃないけど、それで損すること結構あったんじゃないの?」
「うっ……! ま、まあな」
「だよね。ということで恩返しさせて」
「恩返しかー。君は何ができるんだ?」
「身の回りのお世話や暗殺、この星を滅亡させるくらいのことはできるよ」
「サラッと怖いことを言うな。うーん、じゃあ、俺を守ってくれ」
「それだけでいいの?」
「お世話係とアシスタントはもういるからな。ということで今日から君は俺のボディガードだ」
「分かった。じゃあ、これからよろしくね、お兄ちゃん」




