私、頑張ります!
毛女郎は髪の毛を触手のようにしなやかに動かし、ものすごいスピードで漫画を仕上げた。
「ちょ! ちょっと! それ、ズルくない?」
「え? そうなんですか?」
「そうよ! ねえ、お兄さん」
「セイローン、漫画はな腕が多かろうが少なかろうが形になってればそれでいいんだよ」
「それは……まあ、そうね」
「じゃ、じゃあ、私をアシスタントにしてくれるんですね!」
「待て。その前に一つ質問してもいいかな?」
「は、はい、大丈夫です」
「このファンレターは君のかな?」
「はい、そうです。先生のそばにいたくて私の髪をファンレターと一緒に封筒に入れました」
「そうか。この髪は君のものだったのか」
「あっ! じゃあ、あなたがこの部屋に侵入できたのって」
「髪を座標にしてテレポートしました」
「妖怪の力を堂々と悪用しないでよ……」
「アポなし家庭訪問については謝ります。ごめんなさい。でも、私は先生の力になりたいんです。どうか私は先生のアシスタントにしてください」
「俺は別にいいよ。セイローンはどうだ?」
「え? あー、うーん、じゃあ、とりあえず試用期間が終わるまでお願いするわ。本採用するかどうかは今後のあなたの頑張り次第で決めるわ」
「あ、ありがとうございます! 私、頑張ります!」
「そうか。じゃあ、これからは『けーちゃん』って呼んでもいいかな?」
「はい! 問題ありません!」
「そうか。じゃあ、この原稿のベタを頼む」
「承知しました!」
遊郭にいるはずの妖怪がアシスタントになるとはね。まあ、別にいいけど。




