表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/1938

帰還

 座敷童子の座敷童子(わらこ)と共に彼女の実家に行くことになった雅人まさと

 彼が無事に帰ってこられるかどうかはまだ分からないが、きっと彼なら大丈夫……なはず。


「なあ、童子わらこ。お前の実家って、どこにあるんだ?」


「こことは違う次元にあり、こちらの世界とは時間の進み方が違います。なので、今日の夕方には帰れると思います。生きて帰れたらの話ですが……」


 そ、そうだなー。生きて帰れるといいなー。

 彼女の母親は人間と鬼を恨んでいる。

 彼が何の対策もせずに行けば、即退場。

 そのため、童子わらこは彼の鬼の力が誰にも探知できないように文字使いの力を使ったのである。


「えっと、それじゃあ、これから座敷童子の里? 村? に行ってくるから、留守番しててくれ」


「分かった……いってらっしゃい。お兄ちゃん」


 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は少しうつむきながら、覇気のない声を出した。


「大丈夫だよ。僕はもうほとんど鬼みたいなものなんだから、簡単には死なないよ」


「でも、文字使いにはかなわないじゃん」


 うっ……そ、それはまあ、そうだけど……。


「あなたのお兄さんはそこそこ強いですし、もしもの時は私があなたのお兄さんを全力で守ります」


童子わらこちゃん……」


 童子わらこ夏樹なつきを安心させていると、童子わらこ従姉妹いとこである童寝わらねさんがこう言った。


「一応、私も行くつもりだけど、いいかな?」


「どうぞご自由に。ただし、母の前で雅人まさとさんが鬼の力を宿していることを言わないようにしてください。いいですね?」


 童寝わらねは苦笑しながら、こう言う。


「わ、分かったよ。まったく、童子わらこちゃんは私のことをなんだと思ってるの?」


「子どもより子どもな姉です」


 直球だな。


「うっ……! ひ、否定できない。ま、まあ、とにかく早く実家に戻ろうよ」


「そうですね。それでは、いってきます」


 童子わらこはそう言うと、当然のように僕の手を握った。


「あ、あのー、童子わらこさん」


「何ですか?」


 彼女はこちらを見ていない。


「どうしても手を握らないといけないんですか?」


「次元の狭間はざまに行きたいのなら、今すぐ手を離します」


 そんなところ、行きたくないに決まってるだろ!


「ごめんなさい。許してください。な……いえ、なんでもないです」


「ちっ……もう少しで言質げんちが取れたのに」


 今なんか舌打ちしなかった? したよね?


「なーんてね、冗談ですよ。それでは、参りましょうか」


「あ、ああ」


 童子わらこが空中に人差し指で『帰還』という文字を書くと、僕と童寝わらねさんと童子わらこ童子わらこの実家の門の前に転送された。

 はぁ……ちゃんと五体満足で帰ってこられるのかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ