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やっぱりあなたは気づいているのね
深夜。ここか……あいつが住んでる家は。
「すり抜け」
「動かないで」
「あっ、セイローンちゃん。久しぶりー」
「久しぶり。それで? どうしてあなたはちょくちょく漫画の世界から出てきてるの?」
「外の世界を見たくなったからだよ」
「それは漫画の世界から出たくなったってこと?」
「うーん、それもあるけど『この世界』の外っていう意味でもあるよ」
「そう。やっぱりあなたは気づいているのね」
「まあね」
「それで? あなたはこれからどうするの?」
「今のところこの世界から出る方法はないからしばらくぶらぶらしようと思ってるよ」
「そう。じゃあ、できるだけお兄さんに近づかないで」
「分かってるよー。でも、たまに遊びに来るのはいいでしょ?」
「ええ」
「やったー。じゃあ、またね、セイローンちゃん」
子どもの落書きみたいな女の子はお兄さんの部屋の間取りを記憶しつつ家から出た。
「今のところ敵意はないみたいだけど何をしてくるか分からないから用心しておきましょう」
「わーい、お札のプールだー」
「大きな寝言。よしよし、ゆっくりおやすみ」




