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救出 前編
ギャグ漫画の世界に閉じ込められた俺。子どもの落書きみたいな女の子に捕まり、今から丸焼きにされるところだ。いや、あの、ホント誰でもいいから早く助けに来て。
「上手に焼けるといいなー」
「な、なあ、俺なんか食べてもおいしくないぞ?」
「外の世界の人間の肉はおいしいって誰かが言ってたなー」
「誰だよ! そんなこと言ったやつは!!」
「うーん、誰だっけ? 忘れちゃった。さてと、じゃあ、丸焼きにするねー」
「や、やめろ! やめてくれ! 俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ!!」
「そうなの?」
「ああ! そうだ!!」
「でも、私おなか空いちゃった」
「じゃあ、一緒に狩りに行こう! 二人で行った方が捕獲率上がるぞ!!」
「そうなの?」
「ああ! そうだ!!」
「そうなんだ。じゃあ、私のナイフ貸してあげる。あっ、それ、なんでも切れるから気をつけてね」
「わ、分かった。じゃあ、一緒に行こうか」
「うん!!」
あれ? お兄さん、書店のどこにもいない。もしかして本の中に吸い込まれたのかな? えーっと、お兄さんは……この本の中にいるわね。待っててね、お兄さん。今助けに行くから!!




