赤ちゃんみたいに
日曜の朝。
彼は身支度を終えると、とりあえず一階のリビングに向かった。
「童子に会ったら、とりあえず謝る。童子に会ったら、とりあえず謝る……」
復唱しながらリビングに向かうと、座敷童子と白猫がソファーに横になっているのを発見した。
「無防備だな……。僕じゃなかったら襲われてるぞ」
彼が彼女の頬を人差し指でつつくと、彼女は小さな手でそれを掴んだ。
彼が指を抜こうとすると、彼女はそれを口の中に入れた。
「え? ちょ、おい、童子。僕の指は食べ物じゃないぞ。というか、早く起きろ!」
彼が彼女の体を揺すると、彼女は口の中にある指を思い切り噛んだ。
「痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 千切れる! 千切れる!」
「……う、うーん……騒がしいわねー。どうしたのー? ダーリン」
白猫が目を覚ますと同時に雅人は彼女に助けを求めた。
「頼む! 童子を起こしてくれ! じゃないと、僕の指が千切れ……痛い! 痛い! 痛い! 痛い!」
白猫はまだ眠いようだ。
彼女は半目で彼女の体を揺する。
すると、座敷童子は白猫のシッポをギュッと掴んだ。
「ニャッ!? そ、そこはダメニャー。フニャー」
「え? ちょ、おい! しっかりしろ! お前だけが頼りなんだよ! おい!」
白猫は気持ち良さそうな表情を浮かべながら、マットの上に落ちた。
「……朝からうるさいなー。何の騒ぎー?」
夏樹(雅人の実の妹)が寝ぼけ眼を擦りながら、リビングにやってくると彼は彼女に助けを求めた。
「夏樹! 助けてくれ! このままだと童子に指を食いちぎられ……痛い! 痛い! 痛い! 痛い!」
「あー、うん、分かった。えいっ」
彼女は黒い長髪で童子を拘束すると、彼女の耳の穴に黒い長髪の先端を入れて、動かし始めた。
「あ、あはははは……やめてよー、くすぐったいからー」
その直後、座敷童子がようやく目を覚ました。
「あ……お、おはようございます」
「おはよう……」
彼女は自分が何をしていたのかを覚えていない。
しかし、自分が何かをしてしまったことには気づいた。
「えっと、その……ごめんなさい」
「いや、別に気にしてないからいいよ。それより、その……き、昨日はごめんな」
座敷童子は彼が何の前触れもなく謝ってきたため、少し不思議に思ったが、昨日のことという言葉を聞いた時、ようやく彼の謝罪の意図を理解した。
「いえ、謝らなければならないのは私の方です。ごめんなさい」
「いやいや、僕の方が……」
それが数回続くと、夏樹は二人の間に割って入った。
「はいはい、そこまで、そこまで。とりあえず仲直りできたんだから、朝ごはんにしようよ」
「そ、そうだな」
彼はそう言うと、洗面所に向かった。
彼がいなくなると、夏樹は彼女を解放した。
そのあと、彼女の方を指差しながら、こう言った。
「今回は見逃してあげるけど、もう二度とあんなことしないで!」
「あんなこと?」
え? もしかして、本当に……無意識のうちにあんなことやってたの?
「もしかして覚えてないの? お兄ちゃんの指を赤ちゃんみたいにチュパチュパしゃぶってたんだよ?」
「え? わ、私が……雅人さんのを……ですか?」
そ、その言い方、なんかエッチだよ。
「そうだよ! だから、これからは気をつけてね!」
「あっ、はい、分かりました。以後、気をつけます」
座敷童子はそう言うと、朝ごはんの準備をし始めた。




