表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/1935

赤ちゃんみたいに

 日曜の朝。

 彼は身支度みじたくを終えると、とりあえず一階のリビングに向かった。


童子わらこに会ったら、とりあえず謝る。童子わらこに会ったら、とりあえず謝る……」


 復唱しながらリビングに向かうと、座敷童子と白猫がソファーに横になっているのを発見した。


「無防備だな……。僕じゃなかったら襲われてるぞ」


 彼が彼女の頬を人差し指でつつくと、彼女は小さな手でそれをつかんだ。

 彼が指を抜こうとすると、彼女はそれを口の中に入れた。


「え? ちょ、おい、童子わらこ。僕の指は食べ物じゃないぞ。というか、早く起きろ!」


 彼が彼女の体をすると、彼女は口の中にある指を思い切り噛んだ。


「痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 千切ちぎれる! 千切ちぎれる!」


「……う、うーん……騒がしいわねー。どうしたのー? ダーリン」


 白猫が目を覚ますと同時に雅人まさとは彼女に助けを求めた。


「頼む! 童子わらこを起こしてくれ! じゃないと、僕の指が千切ちぎれ……痛い! 痛い! 痛い! 痛い!」


 白猫はまだ眠いようだ。

 彼女は半目で彼女の体を揺する。

 すると、座敷童子は白猫のシッポをギュッとつかんだ。


「ニャッ!? そ、そこはダメニャー。フニャー」


「え? ちょ、おい! しっかりしろ! お前だけが頼りなんだよ! おい!」


 白猫は気持ち良さそうな表情を浮かべながら、マットの上に落ちた。


「……朝からうるさいなー。何の騒ぎー?」


 夏樹(雅人まさとの実の妹)が寝ぼけまなここすりながら、リビングにやってくると彼は彼女に助けを求めた。


夏樹なつき! 助けてくれ! このままだと童子わらこに指を食いちぎられ……痛い! 痛い! 痛い! 痛い!」


「あー、うん、分かった。えいっ」


 彼女は黒い長髪で童子わらこを拘束すると、彼女の耳の穴に黒い長髪の先端を入れて、動かし始めた。


「あ、あはははは……やめてよー、くすぐったいからー」


 その直後、座敷童子がようやく目を覚ました。


「あ……お、おはようございます」


「おはよう……」


 彼女は自分が何をしていたのかを覚えていない。

 しかし、自分が何かをしてしまったことには気づいた。


「えっと、その……ごめんなさい」


「いや、別に気にしてないからいいよ。それより、その……き、昨日はごめんな」


 座敷童子は彼が何の前触れもなく謝ってきたため、少し不思議に思ったが、昨日のことという言葉を聞いた時、ようやく彼の謝罪の意図を理解した。


「いえ、謝らなければならないのは私の方です。ごめんなさい」


「いやいや、僕の方が……」


 それが数回続くと、夏樹なつきは二人の間に割って入った。


「はいはい、そこまで、そこまで。とりあえず仲直りできたんだから、朝ごはんにしようよ」


「そ、そうだな」


 彼はそう言うと、洗面所に向かった。

 彼がいなくなると、夏樹なつきは彼女を解放した。

 そのあと、彼女の方を指差しながら、こう言った。


「今回は見逃してあげるけど、もう二度とあんなことしないで!」


「あんなこと?」


 え? もしかして、本当に……無意識のうちにあんなことやってたの?


「もしかして覚えてないの? お兄ちゃんの指を赤ちゃんみたいにチュパチュパしゃぶってたんだよ?」


「え? わ、私が……雅人まさとさんのを……ですか?」


 そ、その言い方、なんかエッチだよ。


「そうだよ! だから、これからは気をつけてね!」


「あっ、はい、分かりました。以後、気をつけます」


 座敷童子はそう言うと、朝ごはんの準備をし始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ