妖怪福笑い
最近、顔のパーツの配置がおかしくなる事件が多発している。家でぼーっとしている時にいつのまにかそうなっているらしい。一応、自力で元に戻せるため特に困っている人はいないようだ。
「うーん、でも、なんで被害者全員うちの生徒なんだろう。まあ、いいか。学校行こうーっと」
「お義兄ちゃん! 一緒に学校行こう!」
「おー、いいぞー」
「やったー」
「おい、夏樹。髪の色、いつもと違うけど大丈夫か?」
「え? あー、これ? 童子ちゃんに神になってほしいって言われたから毎日特訓してるんだよ」
「それは知っている。でも、学校にいる間は黒に戻した方がいいぞ。風紀委員に目をつけられるから」
「そうだね。分かった。じゃあ、戻すね」
夏樹(僕たちの妹)の銀髪が黒髪に戻る。うん、やっぱりこっちの方がいいな。
「じゃあ、行こっか!」
「ああ、そうだな」
『いってきまーす』
玄関の扉を開けると顔のパーツの配置がおかしくなった犬、猫、カラス、スズメなどがいた。
「あははははは! 変な顔ー!」
「夏樹、笑いごとじゃないぞ。元に戻してやれ」
「はーい。さぁ、みんな集まってー! 元通りにしてあげるよー!」
「ワン!」
「ニャー!」
「アホー!」
「チュン! チュン!」
「コケー!」
数分後、動物たちの顔は夏樹の髪の能力のおかげで元に戻った。
「お義兄ちゃん、これって妖怪福笑いの仕業じゃない?」
「多分そうだろうな。ちょっと検索してみるか」
検索。妖怪福笑いの現在地。あっ、うちの高校の屋上にいる。
「見つけた。うちの高校の屋上にいる」
「そっか。じゃあ、試しに神速使ってみるね!」
「夏樹、まだ使い慣れてない力を人間界で使うのはやめた方がいいぞ」
「えー」
「えー、じゃない。もしそれのせいで町が消滅したらどうする?」
「うーん、それで世界中を更地にしてから考える!!」
「……夏樹」
「冗談だよー。というか、ちゃんと周囲に影響が出ないようにするから使っても大丈夫だよー」
「そうか。じゃあ、試しに使ってみてくれ。もし被害が出たら僕が元に戻すから」
「はーい!」
夏樹の髪の色が黒から銀に変わる。
「じゃあ、いっくよー! それー!」
夏樹は『神速』を使い、一瞬で屋上まで移動した。
なるほど。髪の力の対象を町全体に広げることで神速の影響で町が消滅しないようにしたのか。やるな。
「まあ、空間と空間を繋げた方が早いんだけどな。よいしょっと」
僕は星の王の力でワームホールを作るとそこを通って学校の屋上まで移動した。
「お義兄ちゃん! こっちに福笑いいるよー!」
「そうかー。見つけてくれてありがとな、夏樹」
「どういたしまして!」
「……えっと、もしかして君自分の力を制御できてないのかな?」
「……はい」
「そうか。じゃあ、このお守りをあげるね」
「これは?」
「霊力を一定に保つ天秤の力が入ってるお守りだよ」
「そんなすごい力が込められたお守りを私なんかがもらっていいんですか?」
「ないと困るのは君だ。だから、肌身離さず持っておいてくれ」
「は、はい! 分かりました! ありがとうございます!」
「どういたしまして」
妖怪福笑いが屋上からいなくなると夏樹は僕に体を預けた。
「いいなー。私もアレ欲しいなー」
「お前には必要ないんじゃないか?」
「いるよー。いつ何が起こるか分からないんだから」
「そうか。じゃあ、家に帰ってから作るよ」
「わーい! やったー! お義兄ちゃん、大好きー!」
「はいはい」




