軍曹、戦地に舞い戻る
屋根裏……。
とっくの昔に引退したのに悲鳴を聞くと体が勝手に動き出してしまう。まあ、死ぬまでこの仕事を続けるつもりだから特に問題ないな。よし、行くか。
「子どもたちよ、狼狽えるな」
「父さん!」
「パパ!」
「父上!」
「軍曹!」
「子どもたちよ、やつらは今どこにいる?」
『この家のどこかにいます!!』
「そうか」
先ほどの悲鳴はこの家の一階から聞こえていたな。
「まあ、とりあえず一階に行ってみるとしよう」
『い、いってらっしゃい!』
「ああ、行ってくる」
一階……。
「へっへっへ、人間の動きなんて止まって見えるぜ」
「たしかに!」
「なあ、知ってるか? あいつらこの星の出身じゃないらしいぜ」
「マジかよ!」
「じゃあ、あいつらは異星人なのか?」
「ああ」
「……では、貴様らはエイリアンだな」
「だ、誰だ! うっ……!」
「あ、兄貴ー!!」
「くそっ! 兄貴がやられた! と、とりあえず二手に別れろ!!」
「あ、ああ!」
な、何なんだ!? あいつ!! 無音で近づいてきたぞ!! と、とにかくできるだけ狭い場所に隠れよう。
「今すぐこの家から出ていけ。そうすれば命だけは助けてやる」
「きょ、今日は外寒いんだよ! 明日になったら出ていくから見逃してくれ!!」
「嘘をつくな、今日は猛暑だぞ」
「そ、そうかよ! じゃあ、逃げて! 逃げて! 逃げまくってやるよ!!」
「甘い! とうっ!!」
「うおっ!」
な、なんだ? 今の無駄のない無駄な動きは……こんなやつ日本に存在するのか……?
「ムシャムシャ……。うーむ、やはり少々クセがあるな。だが、ここは戦場だ。好き嫌いせず食える時に食っておかないと命取りになる。さてと、次で最後だな」
「はぁ……はぁ……はぁ……家を一周して冷蔵庫の隙間に戻ってきてしまった。まあ、いいか。どこかに食べカス落ちてないかなー」
「貴様で最後だ」
「うわあ! 出たー!!」
「覚悟しろ! はー!」
「ぎゃあああああああ! で、でも! この世界には仲間がたくさんいる!! 数匹倒したところで何の問題もない!!」
「それは生まれた時から知っている。だが、私たちはお前たちがこの世からいなくなるまでお前たちを狩り続ける。私たちアシダカグモが絶滅するまで。では、いただきます」
ああ……そうか。こいつが噂の軍曹だったのか。くそー、もっと早く気づけばよかった……。
「ただいまー」
『おかえりなさい! 軍曹!!』
「はっはっは、元気があってよろしい。では、今日の戦利品をお前たちに分けてやろう。さぁ、どんどん食え。食えば食うほど強くなれるぞー」
『はーい!!』




