神になる特訓
雅人兄さんはしばらく新世界で暮らすことになった。一応、僕の分身が交代で護衛してくれているため何かあっても大抵のことはなんとかなる。しかし、神や別世界の夏樹(僕たちの妹)が兄さんを襲撃する可能性がある。僕はこれを兄さんに危害を加えようとする存在が何か企んだ時点でその存在に合わせた捕獲結界でその存在を捕獲する仕組みを構築し解決した。ちなみにそれは僕の許可がないと解除できない。まあ、闇堕ちした僕や夏樹が来た場合は捕獲結界に幸せな夢を見せる力や幻影を見せる力を付与しないといけないんだけどね。
「ねえ、お義兄ちゃん。新世界にお義兄ちゃんや私はいるの?」
「僕の本体はいないけど分身ならいるよ。それと向こうには雅人兄さんのことが夏樹がいるよ」
「ふーん、そうなんだ。ん? ということは新世界の私はお義兄ちゃんにあんなところやこんなところを弄られてることになるのかな?」
「まあ、一応、微調整はしたな」
「その微調整というのを詳しく教えてほしいなー」
「いや、肉体と精神と魂をコピペした後、雅人兄さんが困らないようにいろんな情報を向こうのお前の脳にインストールしただけだよ」
「それだけ? 胸とか弄ってないの?」
「弄ってないぞ」
「ふーん、そうなんだ。向こうに妖怪はいるの?」
「いるけど、この世界みたいに堂々と共存してないぞ。だから朧車タクシーとか人妖共学校とかはないよ」
「へえ、なんかもうやってること創造神だね」
「まあ、そうだな」
「星の王に選ばれた方のお兄ちゃーん! 全力合体した体元に戻ったよー!!」
「分かったー! 今行くー! ブレインが呼んでるからちょっと行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
「あっ、そうそう冷蔵庫に手作りプリンがあるから食べていいぞ」
「はーい」
お義兄ちゃんがリビングからいなくなるといつも真顔な座敷童子が私の目の前に現れた。
「お久しぶりです。座敷童子の童子です」
「久しぶり。それで? 私に何か用?」
「単刀直入に言います。夏樹さん、神になってください」
「……それ、絶対ならないとダメ?」
「半神でも構いません。とにかくあなたの中の絶望を永久に封印し続けるには神になる必要があります」
「童子ちゃん、はっきり言いなよ。絶望を封印する箱を頑丈にしろって」
「言わなくても分かると思ったので言いませんでした」
「ふーん、そうなんだ。いいよ、神になってあげる。でも、いいの? 私が神になったら童子ちゃんが私に勝てる可能性ほぼゼロになっちゃうよ」
「文字の力は神にも効きます。まあ、神相手だと文字にかなりの霊力を込めないと発動すらしませんがね」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、童子ちゃんがどんな文字を使っても発動しなくなるようにするね」
「その領域に辿り着けるといいですね」
「辿り着けるよ、私に限界ないから」
「いいですね、あなたのそういうところ私は好きですよ」
「はいはい。じゃあ、久しぶりに神化しようかな」
「まずはその状態で生活できるようになってくださいね」
「はいはい、分かった分かった。えいっ!」
「はい、その状態をキープです」
「はーい」
こうして神になる特訓が始まった。




