流れ星に願いを
あっ、流れ星だ。
「えーっと……ますように」
この願いだけは叶えてほしい。だから僕は流れ星に願いごとをした。
「お兄ちゃん! 何してるの?」
「星を見てたんだよ。今日は星がよく見えるから」
「ホントだ、きれい」
雅人、お前は幸せ者だな。こんなかわいい娘にお前は一生愛してもらえるんだから。
「お兄ちゃん、どうしたの? 今にも泣きそうな顔してるよ」
「夏樹、この体雅人に返すよ」
「え? ま、待って。それ、どういうこと?」
「絶望の本体がこっちに向かってる。いよいよやつと決着をつける時が来たんだ」
「そう、なんだ。えっと、私に何かできることある?」
「ない。それと僕が希望の力を出し切ったら多分僕は」
「ダメ……」
「夏樹?」
「ダメだよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんがいなくなったら私多分この世界壊しちゃう。だから、お願い。必ずここに帰ってきて」
「……約束はできない」
「そいつそんなに強いの?」
「ああ」
「勝率は?」
「ほぼ勝てない。でも、相打ちにはできる」
「そんなのダメだよ。ちゃんと生還しないと私怒るよ」
「難しいな」
「死んでも生還して」
「無茶言うなよ」
「じゃあ、私も行く」
「絶望に対抗できるのは希望だけだ。それにやつは核を破壊しない限り不死身なんだ」
「お兄ちゃんはそいつの核がどこにあるのか知ってるの?」
「ああ」
「じゃあ、私がそれ取りに行くよ!」
「それに触れると絶望の正体が嫌でも分かるからダメだ」
「絶望の正体? 何? どこかの偉い人なの?」
「偉くはないけどお前がよく知ってるやつらだ」
「やつら?」
しまった、しゃべりすぎた。ダメだな、夏樹(僕たちの妹)の前だとどうも調子が狂う。
「……これ以上は言えない。おやすみ」
「お兄ちゃん! 待って! まだ核がどこにあるのか教えてもらってないよ!」
「お前は知らなくていい」
「そっか。じゃあ、知ってそうな人全員を叩き起こしに行くね!」
「……夏樹、頼むからおとなしくしててくれ。お前を巻き込みたくないんだ。これは僕の戦いなんだから」
「違うよ! お兄ちゃん! 私たちの戦いだよ!」
「……お前、それ言いたかっただけだろ?」
「うん!!」
はぁ……まあ、こうなるよな。
「……核はブラックホールの中にある」
「でも、私の髪はぜーんぶ無効化しちゃうからどこに隠しても無駄なんだよねー」
「そうだな。じゃあ、お願いしていいか?」
「うん! それで? いつ出発するの?」
「明日の深夜だ」
「分かった! じゃあ、もう寝るね! おやすみ! お兄ちゃん!!」
「ああ、おやすみ」
「……ブレイン」
「なあにー?」
「普通の短冊を出してくれ」
「分かったー。普通の短冊ー! はい、どうぞ」
「ありがとう」
数分後。
「ブレイン、絶望との戦いが終わったらこれを夏樹に渡してくれ」
「……お兄ちゃん、これは自分で渡すべきだよ」
「そうだな。でも、生還できるか分からないから」
「はぁ……しょうがないなー。でも、これ見たらお姉ちゃん多分泣くよ」
「その時はお前の発明品でどうにかしてくれ」
「あの髪をどうにかしない限り無理だよー」
「そうだな。じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみー」
死んだらダメだよ、お兄ちゃん。




